無限世界の中心『界央の地』より、ある大罪を犯したという理由で生きながら永劫回帰獄に封じ込められた戦士。生者のまま永劫回帰獄に封じられた者は多くの場合、この領域を理解できずに正気を失って灰と化すが、この男の場合は絶望と嘲りと尽きる事のない怒りがそうはさせなかった。
死の欺瞞と闘争の本質に至ったこの戦士は、名を消されて永遠に生の続く呪いさえも力として、死しても死しても蘇っては戦い続け、遂には永劫回帰獄の四方を統べる王にして騎士たちをも倒し、やがて永劫回帰獄の概念を剣の形に焼き固めて現世へと戻った。
その暴れぶりは凄まじく、『界央の地』直属の十六の超国家の一つ、光の帝国アーラスを現世に戻り来た時に壊滅させ、『船の民』をめぐる天使の軍勢八十億との戦いでは暗黒世界の破壊神を呼び出して戦い、ごく短時間でその三分の一を消し去って撤退させ『船の民』の滅亡を避けたとされている。
その後『界央の地』は天使の他に神の悪徒と呼ばれる高位の暴虐の存在アルサオン(※船の民たちはマスティマと呼んでいる)を用いたが、これらは特にダークスレイヤーに酷い殺し方をされたものが多い。
永劫回帰獄を抜けたダークスレイヤーにとって、最初から地獄界が存在している神の摂理も、つまらない理由で他者を弑する戦争も、絶大な権能を持ちながらも地上の数多の世界を断罪する天使や神の悪徒および、それらを用いる『界央の地』やその背後にいるとされる『隠れし神々』も、全てが欺瞞で何らかの傲慢さに穢れた物と見えており、それらを取り除く戦いを続けている。現世の全てを焼き払えるほどの力のわりに慎重なその戦い方は、彼の優しさと苦悩の表れであるとされ、無限世界に彼と同じように哀しみを垣間見る女性存在たちからはしばしば共感や思慕を集めているが、彼はあまり気にしてはいないようだ。
概念・永劫回帰獄の黒炎
ダークスレイヤーの扱う黒き炎『永劫回帰獄の黒炎』は、あらゆる存在を焼き尽くし一切の不浄を許さないとされる。この黒炎が神々さえ焼き尽くしてしまうのは、この黒い炎の正体が世界と時の終焉した永劫の相たる『有識の闇』そのものだからではないか? という仮説がある。
無限世界の一部の賢い存在たちは世界の開闢前と終焉後は暗黒であると考えており、開闢以前の暗黒は『無識の闇』と呼び、世界終焉後の暗黒は『有識の闇』と呼んでいる。ダークスレイヤーの扱う『永劫回帰獄の黒炎』はこの『有識の闇』であり、無数に等しい世界の時の中に知によって刻まれた『識』を宿しつつも永劫の闇であるこの概念は、いかなる濁りも許さない大いなる暗黒と呼ばれる純粋な闇であると同時に、全てを知り分けてなお混淆としているとされ、それ故に物質界の全ての者が持つ欺瞞の濁りを無意味なものにしてしまうとされている。
いずれにせよ真相は不明だが、現在のところこの力をほぼ自在に扱えるのは『人なる神の時代』にそれらを超越して存在し、かつ強力な男性性を持つとされるダークスレイヤーのみである。
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