チェルシーの銀講座、ウロンダリアの銀

 さて、私は先日Xでこう言いました。

【チェルシーの銀講座】

 ウロンダリアの銀について知りたい? よろしい。では説明しましょう! グラミル銀、バーダル鍛銀、ベルニ銀、ダギミル銀、セルス銀、ネザイト銀……レアなの入れるとざっと二十種類近くはありますね。え? 多いって? 魔法は銀の性質を変えるのに?

 というわけで、ここでは特別に私がウロンダリアの銀について説明しますね!

魔法の銀について!

グラミル銀

 えーと、もともと~ミル(mil)は竜の言葉や魔族の言葉のMil(ミル)すなわち魔法的な銀を意味している言葉なんですよ。グラミル銀の正しい言い方はユグラミルつまり『世界樹の銀』を意味しています。長い年月の間にユの部分が省略されてグラミル(Gramil)になったんですが、とても価値のある金属なので人間たちはグラミル銀(Gramil Silver)とか呼んでますね。ちょっとありがたがってる言い方になります。樹銀という言い方もありますね。

 グラミル銀は世界樹が地下の銀鉱脈から銀を吸い上げては道管から産出する貴重な銀で、光の側の古き民(アールン)たちが加工技術に長けています。精霊の祝福を受けた銀であり、属性によって色合いが変わりますし、無垢なものは虹色の光沢があるとされています。

 この金属には植物のように繊維的な方向性や細胞のような性質があり、これを壊さないように加工するのが大事ですね。ただ溶かして伸ばして、なんて事もできませんし、再利用も簡単じゃないです。世界樹か、あるいはそれに近い機能のある炉が無いと修理や再利用も難しいでしょう。ただ、破片や欠片だけでも大変に価値がありますけどね!


ダギミル銀

 はい、前項の知識からこれはDagimil Silverとなりますね。ダギつまりドラゴンの銀なのです。銀鉱を好んで食べて身体を大きくしたダギの鱗や爪、骨などから採れます。つまりは竜銀。

 沢山採りたい場合は地中に住むダギを倒すか交渉する、または古いダギの移動した穴の中を一生懸命探すとかですね。一番平和的なのは晶洞(ジオード)を見つけて割り、たくさんの水晶を用意して地のダギにあげる事です。彼らは水晶が大好きですが晶洞をそのまま食べる事が多く、しかしこれは味が今一つだという事を知っています。そこを人間が手伝って混ざりけなしの水晶だけを食べられるようにしてあげると、彼らは喜んで背中の棘や鱗を少しだけ分けてくれます。

 特徴としてはとても貴重で丈夫で、溶岩に落としても溶けません。銀の性質と竜の性質を併せ持った金属なのです。この鱗で作った鎧は軽くて丈夫で火に焼かれず、この角や骨で作った武器は刃こぼれもしませんが修理も大変だとされていますね。ダギたちの身体から少しこぼれた欠片を拾っても、大きなお屋敷を建てられるくらいの価値がありますし、宝飾品に加工したら貸すだけでも食べるに困らないと言われています。竜言語の触媒として非常に優れているともされていますね。手に持つと少し温かく、薄くすると半透明に濁った輝きを持つ銀です。


バーダル鍛銀たんぎん

 古王国の山間の小国タルドハールの大鉱山都市バーダル鉱山で産出される銀です。鉱石の時点ではもともとはただの銀なんですが、精錬を古代種族ドヴェル族(※小柄で屈強な小人種族)が、鍛造をスレッギ族(※人間より背が低く屈強で、金属等の加工に優れた種族。いわゆるドワーフ的な人々)が担当した銀です。

 さてさて、実は銀は鉄より重い金属なの知ってましたか? 例えばあなたの世界では銀の比重は10.50、鉄の比重は7. 87となるのです。で、こっちもそれくらい。これはつまり、全部銀で武器や甲冑を作ったら鉄のそれよりかなり重くなってしまうんです! これではいけない! 見た目と豪華さだけになっちゃう! という事で、バーダル鍛銀は精錬過程でドヴェル族が祝福を与えて軽量化し、さらにスレッギ族が大変な加工技術で薄くても丈夫にしたり中空構造を取り入れたりして、『軽くて丈夫な銀の武具』を実現しています。この加工が為されているのがバーダル鍛銀ですね。この銀はあまり光沢は無く、いつも薄曇りのように鈍く光っています。

 歴史上ではシスラ共和国を建国した武王ガイゼリックの鎧がこれで出来ているので有名ですね。『語る言葉は詩のように』でこの銀の名前が出てきます。


ベルニ銀

 平たく言いますと『黄金の輝きを持った銀』です。これは鑑定の達人でも見分けがつかないくらい黄金っぽい光沢と質感をした銀なのです。『ベルニ』は『黄金の艶』を意味する言葉で、スレッギ族より小さい古代種族ドヴェル族が銀を精錬する時に歌う『黄金の歌』によって金の輝きを得ている銀です。この銀は普通の銀製品に黄金色の部分を持たせたりする上で、銀と容易に接着できるのでとても重宝されています。

 例えばマリーシア様のこの甲冑とか、何らかの銀とベルニ銀を用いれば似たものは造れるのです!

 ちなみに、実際の価値はただの金より上です。ただの金というのは『何らかの力が込められていない金』という意味ですね。


セルツ銀

 空気が混じっていると言われるとても軽い銀で、空の大陸でしか採掘できません。ウロンダリアの空の大陸は全てが遠い昔の『岩と大樹の時代』の『地たる大樹』の残骸です。『地たる大樹』は『重力』の概念がなく、だから空に浮いているのですが、そんな大樹の中には様々な鉱物の鉱脈もあり、ここで採掘される銀はわずかな重みをもちます。これがセルツ銀で、銀の性質を持ちながらとても軽いために希少価値も高く、空の国々の重要な特産品になっています。

 『翼の民』たちはこの銀で作った軽い装備で武装したりしますが、取り扱いに注意なのは武器としては普通のサイズだと軽すぎる事と、鎧をそのまま置いておくと風で吹っ飛んでしまう事でしょう。この銀の適切な使い方としては盾が軽くて丈夫なのでとても人気がありますし、金持ちなどは護衛役の女性たちにこの銀で作った大きな武器を持たせるなどの趣味があったりします。仕掛け武器などもお勧めですね。


 ネザイト銀

 『暗い銀』を意味し『暗銀』などとも言います。取り扱いに注意が必要な銀で、幾つかの負の概念の力を宿す銀の総称です。生き死人のように周囲の力をじわじわと吸い、関りのある負の領域にその力を流し続ける性質を持っています。体力や気力、魔力などが十分な時は問題ありませんが、疲れている時にこの銀に触れていると立っていられないくらい疲弊しますから、何らかの対策をしないと安全には使えないでしょう。

 しかし、この負の状態は攻撃的なあらゆる正の力を一定量吸収するための耐性として考える事が出来ます。ダギに火を吐かれても魔術による攻撃を受けても、常に一定の割合は吸収してくれるのです。

 この銀の生成方法は確立してはいますが、生成することは基本的に禁じられています。しかし、外つ世界から漂着した遺跡や迷宮にいる死した存在の装備が長い年月で変質したものを手に入れられることはあり、面倒な手続きを経て所有したり転売することは可能です。

 ウロンダリアでは神聖エンデ―ル帝国の親衛暗黒騎士団がこのネザイト銀の装備に身を固めていますが、彼らは全身に神聖な祝福の文字を埋め込んでもらったうえでこの銀の装備を身に着けています。

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