吸血鬼の都アンシルヴァル・前編
──これは、眠り人ルインが目覚める少し前の話。
ウロンダリアは黒曜石の都オブスグンド。その大城壁の西の櫓、眠り人の寝所。
「チェルシーさん、眠り人様は今日もお目覚めには?」
暗い茜色の眼に、黒いリボンで束ねられた流れるような金髪。深紅に見事な金刺繍のマントを羽織った女は、高価な黒鉄木(※ウロンダリアの鉄のように丈夫な黒い木材)のベッドに眠る屈強そうな若い男と、その隣の椅子に座す、聴色(※ピンクに近い色合い)の不思議な色の髪をした給仕服姿の少女に声をかけた。
「ああ、ベネリスさん。まだ眠ってますよ。この人の見た事のない広大な夢の世界は昨夜も変わりありませんでした」
夢魔リリムの姫チェルシーは少し残念そうな抑揚で答えた。
「……そうでしたか。不思議な世界をお持ちのこの方の夢、私も心地よく感じておりますが、やはりまだお目覚めにはならないのですね。いえ、既に山のような無理や要望が積み重なっておりますし、この方からしたら、私たちは夢の領域に土足で入り込む無粋者に過ぎないのかもしれません。そもそも、王たる者はおのれで道を切り開かねばなりませんものね」
最後の意味深な部分は自分に言い聞かせるように、美しい金髪の女は言葉を締めくくった。魔の都の探索者界隈で『暗い瞳のベネリス』と呼ばれる、暗い茜色の眼をしたこの女は、ある危険な探索に向かおうとしていた。
「行くんですね?」
察したチェルシーの言葉には、どこか再考を促す空気も漂っている。
「……ええ、行きます。転移門の許可証はございますか?」
若草色の淡い光に包まれた上位黒曜石の黒光りするカードが、チェルシーの差し出した手の上に現れる。
「どうぞ」
ベネリスはそれを、おのれの決心を確かめるように握りしめて手に取った。
「ありがとうございます。行ってまいりますね」
「気を付けてくださいね?」
ベネリスは夢魔の姫に背を向けて階段を降り始める。その背にチェルシーが独り言のように助言をつぶやいた。
「今回、『塩の秘術』または『灰の秘術』で実体化するであろうあの二人は、私たちと同じ上位魔族の、しかも同じ派閥です。だから私とラヴナちゃんは剣を向けられませんが、みんなに声をかけておきました」
「……ありがとうございます」
階段を降り、昇降機で眠り女たちの階に降り立ったベネリスは、そこで旅支度を整えた何人かの眠り女たちが待ち構えている事に気づき、思わず声をあげる。
「まさか皆さん、私の為に? シルニィさんまで?」
「他人行儀が過ぎますよ? ベネリスさん。魔術師の力は必須でしょうし、巨人の魔術も実戦でもう少し磨き上げたいのです」
ベネリスの頭が鳩尾の部分という身長、長い栗色の髪を束ね、銀の鎖を編み込んだ藍色のローブを着た、巨人族の女魔術師、メルト。
「私も訳あって戦技を研鑽すべき身だ。そして同胞の困難を放置する事はできない。我が獣戦士の一刃、ぜひ役に立ててもらいたい」
長く白い髪に赤い目、褐色の引き締まった体に、最小限の黒い具足と、背中に吊るした二振りの大曲剣。魔獣を友とする闇の古き民の戦士、ギゼ。
「チェルシーさんに……たまには……仕事しろって言われて……それで……」
猫か何かの耳のふくらみのある黒いフードとマントから、白い顔と薄赤い目が自信なさげに覗く。卓越した結界術の使い手だとされる、白い猫の獣人、シルニィ。
「なるほどね、ここに張られている不思議な結界の力の根源はあなただったのね? この神聖な力、悪くないわ。……で、私も同行するわ。吸血鬼の都アンシルヴァル、一度行ってみたかったのよね」
白い簡素なワンピースに、今は髪の色が神聖な青白い輝きを纏う、少し小柄な妖精族フォリーの精霊使い、クームシェリー。その手首や虹色を帯びた銀のベルトには、精霊と意思を疎通するための幾つかの水晶玉が付けられている。
ベネリスは驚き、その眼が少しだけ潤む。
「皆さん、いささか漢気と言いますか……そのようなものが勝っておりませんか? それとももしかしたら、眠るあの方の夢に当てられたのでしょうか。気の良い、では済まない戦いになるかもしれないのですよ?」
この言葉にギゼが不敵な笑みを浮かべる。
「吸血鬼の都アンシルヴァルの『剣の試練』は古来から有名だ。『塩の秘術』または『灰の秘術』により、二人の吸血鬼の女王を呼び出して力比べをすると聞いている。戦技を磨く長い旅の途中である私にとって、これほど心惹かれる試練もそうないものだ」
魔の国出身のギゼにとって、この古都アンシルヴァルの試練は古来から有名だった。しかし、試練の発動条件はなかなかに厳しく、今回は数十年ぶりに『暗い瞳のベネリス』がそれを満たす見通しとなった経緯がある。
ベネリスは全員に深々と一礼した。
「手を貸していただけること、深甚に思います。でも皆様、命を大切にしてくださいね?」
こうして、『暗い瞳のベネリス』を筆頭とした即興の小隊が出来上がり、普段はなかなかに通行の許可の下りない『吸血鬼の都』古都アンシルヴァルに、彼女たちは闘志を燃やして向かう事となった。しかし、その行く手には驚愕と恐るべき戦いが待ち受けていた。
西の櫓内の転移門の内側のくぼみに黒曜石のカードをはめ込んで転移したベネリス一行は、たどり着いた街の暗さと陰鬱さに驚いた。初春の好天だった魔の都から一転、そこは肌寒く暗い曇り空の下に陰鬱に霧が立ち込めており、街の広場の真ん中らしい場所だというのに人の気配もしない。
「ここがアンシルヴァルでしょうか? 雰囲気は随分と暗いですね……」
メルトが周囲を見回す。大型の石組みの転移門の中心には石組みの円形の泉があり、中心には四匹の大きな青銅の守護獣の像が水盤を支え、その水盤から流れる水が冷たい水音を立てていた。泉の中には幾つかの金貨や銀貨が曇った光をはね返しているが、それ以外はことごとく灰色に沈んだ景色に、一行は不吉なものを感じ取っていた。
「何らかの大術式が働いているわね。闇や夜の精霊の力がとても強いわ」
クームの髪が闇色に艶めいている。
「ようこそ我らが古都アンシルヴァルへ」
どこからともなく金属の響きを帯びた耳障りな声がし、眠り女たちはその出どころを探した。
「ここだ。我らはアンシルヴァルの門の守り手よ」
水盤を担ぐ守護獣の像の一体が、しゃべりつつ手を伸ばす。
「まずは魔王様の審査を通り、この秘匿された都にたどり着けたことを歓迎しよう。して、『剣の試練』を受けたいとの事。必要な財貨を我らが手に乗せるのだ。信用たる財貨の重さ足らなくば、貴公らは元居た場所に戻される」
残り三体の守護獣の像も、青銅だった目が生き物の目となり、それぞれ手を伸ばした。
「……わかりました。手順は聞いておりますわ」
ベネリスは銀で編まれた魔導の財布を取り出した。まずはひとつかみ、ずっしりとした金貨を守護獣の手に乗せ、加減を見て一枚ずつ乗せていく。
「これでよい」
一体めの守護獣は金貨を飲み込み、水盤に小さな青白い鬼火が灯る。
「引き続き、我らに財貨を」
同じ手順で、二体、三体と守護獣に金貨を渡す。必要な枚数を満たした金貨は守護獣が飲み込み、そのたびに水盤の鬼火は大きくなった。
「これで良い」
四体目の守護獣が金貨を飲み込んだとき、水盤から天を穿つ青白い光の柱が上る。同時に、吸血鬼の都はより薄暗くなり、陰鬱にして重厚な街路に、同じ色の鬼火の街灯がともった。
「諸々の事情により、我ら血の眷属の四人の女王が二人、エリザベート様とダリヤ様の眠る黒水城(※上位魔族の戦時語ではオーンシェヴ・ガル)へは、友好的な者が複雑な道順を辿らねば行き付けぬ。迷わぬように心するが良い。……迷えば、再び現世に帰れる保証はない!」
ベネリスを筆頭に、眠り女たちは誰ともなく何かを吞み込むような空気が漂う。
「行きますとも。所詮……血塗られた道です」
「街路の我らが灯火に従うと良い。やがて街路は黒い階段となり、登ればさらなる秘境、『黒き城の森』に至るであろう。エリザベート様とダリヤ様は、その森の城に安置されておられる」
「わかりましたわ」
神聖な加護を受けたきらめく槍を持つベネリスは、その手に力を入れて歩き始める。
吸血鬼の都アンシルヴァルは、転移門から出ると八方向の街路が伸びており、そのうちの一本に、見通せない彼方まで青白い灯火の灯っている場所があった。
「あの道を行けって事?」
クームの声には隠されていない警戒が漂っている。
「そのようだな、行くしかあるまい」
ギゼの慎重な声。
「行きましょう」
ギゼとベネリスを先頭に、眠り女たちは陰鬱な街路を進む。吸血鬼の都アンシルヴァルは人影一つ見当たらず、青白い灯火は時に店の中を、時に非常に狭い路地を、時に、血の神マリスを祀る教会の中を通り過ぎ、やがて最後に切り立った崖を登り、まばらな墓石の立つ切り立った崖の行き止まりへと至った。
「ベネリスさん、これ、行き止まりでしょうか?」
メルトが怪訝そうに周囲を見渡す。
「いえ、違いますね、あれをご覧になって」
規則正しく並ぶ鬼火は、切り立った崖の向こう、曇って霧がかった空中に続いている。それはまるで見えざる階段が続いているように見えていた。
「迷う者、怖気づく者は来るなという警句を含んでいるのでしょう。上等です。私の血塗られた道と血の眷属たる吸血鬼の道、果たしてどちらが危険なのか……」
「うん……この道で……合ってる」
ベネリスの覚悟に、珍しくシルニィが言葉を続けた。
「シルニィさん、わかるのですか?」
「うん、幻術の……階段。その向こうは……何か別の……場所に……転移する、……術式がある……の」
「心強いですわね」
微笑んだベネリスが空中に一歩を踏み出すと、何も無かった足元に魔力の光がほとばしり、黒い石の階段が現れ、それはある程度歩いた先に開く暗黒の大穴に続いている。
「いよいよ、『黒い城の森』ですか……」
一行が空中の階段を上りきり、闇の穴を通り抜けると、そこには広大な陥没地形が広がり、外周の崖を超える高さの常緑の木々が生い茂る、暗い森が広がっていた。
「ああ、ここは精霊の力がごくわずかね。闇の力が強くて、私の連れてきた子たちしか呼び出せないわ」
クームが警戒を隠さない声でつぶやいた。
大まかには円形をしているらしい陥没地形の中央付近に、黒雲から数条の赤い雷が落ち、それは複数の尖った尖塔を持つ大きな魔城の影を浮かび上がらせた。その禍々しい巨大な影は、それだけで激しい恐怖を起こさせるものだった。
──古代の吸血鬼の王ヴァルキルドの城、黒水城(オーンシェヴ・ガル)。
今やこの城は正統な後継者を失い、真祖に次ぐ純血の吸血鬼たちが守っていると伝わる。
赤い稲妻は激しさを増し、ベネリスたちの立つ場所から魔城まで続く黒い石畳の長い通路が現れると、次は魔城の影から無数の蝙蝠の群れが飛来し、それは眠り女たちの前に集まって三人の人の姿を取った。くすんだ銀髪に痩せた長身の男。黒い長髪と腰の両側の二本の剣が特徴的な若い顔の男。そして、妖艶な暗い魅力を持つ、胸元が空いた青黒いドレス姿の金髪の女だった。
「来たわ。吸血鬼たちよ」
小声でクームが言うまでもなく、この暗い世界で三人の男女の眼は妖しく赤い光を放っている。
「良く来られましたな。それなりの財貨を払ってまでこんなところに。現在、我らが女王の二人、エリザベート様とダリヤ様は、魔剣鍛冶師フロギー・ドレクの技により、二振りの魔剣に封じ込められています。お二人を『灰の秘術』により呼び出し、力を示せば、ある約定と共に力を貸してくださいますが、試練を受ける覚悟は十分におありのご様子」
痩せた長身の吸血鬼は深々と一礼した。つづいて、二本の剣を吊るした若い吸血鬼が続ける。
「我々がいくら気勢を上げたところで、古き血の神マリス様が囚われており、どうにもならぬ。忌々しいアルカディアの力は絶大で得体が知れず、かつて我らの女王四人を一人で破ってしまったのだ」
妖艶な金髪の吸血鬼が続けた。
「女の吸血鬼は男の血を、男の吸血鬼は女の血を吸うもの。なのに、あの金髪の小娘は女の身で女の血を吸う、我ら吸血鬼の伝統を汚す存在。股の間から杭を打って晒し、カラスの餌にすべき面汚しよ! あなたたちの働きには期待をしているわ」
「待ってください。あなた方吸血鬼の事情は把握していますけれども、私とてそこまで届くかどうか」
深入りを避けようとしたベネリスだったが、痩身の吸血鬼が話を続けた。
「血の匂いで分かる。『暗い瞳のベネリス』と名乗っているが、この古く勇壮な血の匂いは古代バルドの民のもの。その落日の瞳はバルドスタのアーシェラ王女であろう。さらにこの神聖な気配は、古代に何度かその信徒たちと手合わせをしたことのある、美しき軍神ヘルセスの加護の力。首尾よく使徒となり、さらに四人の吸血鬼の女王の力を合わせれば、流石にあのアルカディアも倒せるはずだ」
「……困りましたわね。私の出自と醜聞、ここまで漏れておりましたか。確かにアルカディアは絶大な力を持つとされていますが、私は一泡吹かせたく思っておりますわ」
苦笑しつつも本音を吐露するベネリス。
「その際は我々も助太刀いたそう!」
二本の剣を持つ若い吸血鬼が、期待と熱を帯びた声で宣言する。
「気を付ける事ね。古代の我らの女王たちとアルカディアの戦いでは、終始優勢だったはずの戦いがいきなり逆転したと伝わっているわ。しかもその後、とても厄介な封印をそれぞれが施されてしまった。それを解く事は今だにかなわず、私たちはこのアンシルヴァルに隠れるように過ごすしかなくなってしまったのだから」
忌々しそうに語る女吸血鬼の声には、積年の恨みがこもっている。
「まずは私が試練をくぐらねば、どうにもなりませんわね」
「確かに」
三人の吸血鬼たちは古代にあった、『古き魔族』の吸血鬼と、『追われし魔族』の吸血鬼の二大派閥の頂上決戦となった『ウルガルテ廃聖堂の戦い』と、吸血鬼たちの歴史について語りながら、空中の石畳の通路を先導する。
かつて、あまり婚姻に活発ではなかった吸血鬼たちから次第に王族や貴族の数は減っていき、やがてヴァルキルド王の血統を最後に男系は途絶えてしまったとされる。最後に残ったのは四人の女王。真祖中の真祖とされる古き吸血鬼マリス、ヴァルキルド王の娘エリザベート、上魔王ダイングロードの愛人だったクロエ、第二位の王族の末裔、『銀の指のダリヤ』と呼ばれた銀髪の吸血鬼ダリヤだった。
そして、『追われし魔族』の吸血鬼たちとの派閥争いに次第に押され始めた古き魔族の吸血鬼たちは、ある時大きな紛争を起こす。『深紅の紛争』と呼ばれたこの戦いは長く続くが、古き魔族たちは比較的優位に戦いを進め、『追われし魔族』の首魁だったアルカディアを天空の大陸のどこかにあるという『ウルガルテ廃聖堂』にまで追い詰めたのだが、なぜか最後の戦いで四人の吸血鬼たちは破れ、形勢が完全に覆ってしまった。
マリスは何重もの封印を施されてアルカディアの下僕とされ、クロエはどこかに封印。エリザベートとダリヤは魔剣に封じ込められたと伝わっている。
しかし、真祖の吸血鬼たちは滅ぼされても自らを復活できるように、『塩の秘術』または『灰の秘術』と呼ばれる独自の術式で現世に現れる事が出来るようにしていた。今回の試練もまた、何らかの意図でエリザベートとダリヤが干渉して行っているものだという。
「しかしながら、エリザベート様とダリヤ様のお考えは、我々にも計りかねているのが正直なところです。ささ、着きましたぞ」
長い話を終えた痩身の吸血鬼は、黒水城の正門を示した。
「この城は地上からの出入り口はありませぬ。ゆえにここが正門。下の森には入られませぬように。おぞましい不死者どもがうろついておりますし、追放されたものどもは獣のように強く、また言葉も通じませぬからな。あなた方のような美しい婦人たちは、どのような目に遭うか想像するだに恐ろしいものです」
「試練に挑戦する客人が参られたぞ。門を開けよ!」
女吸血鬼が叫ぶと、見上げるほどの大門が音もなく開く。
「それでは客人、命を落とされぬように。玄関ホールにはエリザベート様とダリヤ様が安置されています。あなた方が一定の位置まで踏み込めば御姿を現されるでしょう。では!」
三人の吸血鬼たちは蝙蝠の大群となり、姿を消した。
ベネリスたちが無言で城内に入ると、暗いが豪奢な広間の中央に、短剣を持った侍女の肩に剣を乗せ、騎士叙勲を行う女王の像がある。その石像の前には二つの白金の壺が置いてあり、中から白い粉を伴った小さなつむじ風が舞うと、金刺繍のふんだんに使われた絹のドレスの金髪の女王と、輝く銀髪の侍女が現れた。
漂う威厳と美しさ、そして暗い力から、眠り女たちはこの二人が何者かを瞬時に理解した。まず、美しい金髪の女王がその赤い目を光らせて名乗る。
「女だけの挑戦者とは実に面白いものだ。しかし、お前たちの心には異常に強い男の気配がする。悪くない。あるいは遂に時が満ちたやも知れぬ。わらわの剣の試練を超えて見せるが良い。わらわは高貴なるヴァルキルド王が娘、エリザベートなるぞ!」
続いて隣に侍る、ドレスとも給仕服ともつかない黒装束に、輝く銀髪の侍女が言葉を続けた。
「エリザベート様、ご存分に美しく戦いくださいませ。そして試練に挑む来訪者たちよ、この『銀の指のダリヤ』の戦技を超えられますか? 我が指はあなた方の死の運命を容易く引き寄せますよ? ……いざ!」
銀髪の侍女は両手を開いて交差させた。指先は全て精巧な銀の指包みがはめられており、それらが暗く光る。ダリヤはその手指を引き絞り、何かが大広間にギリギリと張り詰めた。
(糸か?)
ギゼの優れた眼がうっすらと何かをとらえ、直後、天井から様々な武器を手にした球体関節の人形たちが下がってきた。
「皆様、お覚悟を! ……来ます!」
ベネリスの掛け声とともに、眠り女たちはそれぞれが武器を抜き、また術式の発動に入る。『剣の試練』の火蓋は切って落とされ、激しい戦いが始まろうとしていた。
初稿2021.07.04
コメント
とにかく奥深い世界観。強く気高い女性たちの美しいこと。状況・場面設定が興味を惹きまくりなのは勿論、何から何までがたまりませぬ。後編の読了を待たずに魅了されております。
ありがとうございます!
後編もとても盛り上がりますのでぜひお楽しみください!