これまでに登場した各世界についての説明。
ウル・インテス(豊穣なる雨の地)
無限世界のいずこかに存在する、ウロンダリアとは異なる世界。その意味は『豊穣なる雨の地』。第三章後半の舞台となる。
赤い月シンがもともと存在した世界であり、その名の通りかつては水が豊富で、多くの水場が運河のように繋がり、水場には沢山の世界樹が生えていたとされている。しかし、闇の母神ハドナとその子らの大量の魔物、大洪水、疫病などで次第に衰退して人間は滅び、最後に残った二つの世界樹の都と、古き光の民アールン、月の民ユイエラ、翼の民フェディルが残った。この三種族は知性も高く協力し始めたが、やがて種族の垣根を超えて愛し合う者たちが現れ、それが界央の地の勢力から頽廃であり根源の喪失であるとされて神々を消され、滅亡の未来が示されてしまう事となった。
※『船の民』の介入によってウロンダリアの戦士たちとダークスレイヤーたるルインを過去の世界に呼ぶことに成功したウル・インテスは、『月の落涙』を凌ぎ切り、『船と航海の女神ミゼステ』と半神『月光の英雄オーランド』という二柱の神を取り戻し、『赤い月シン』は別の世界 (おそらくウロンダリア)へと運ばれ、世界最後の日に『二つの世界樹の都テア・ユグラ・リーア』とその民たちもいずこかの別世界へと旅立った。
※また、この世界最後の日、ウル・インテスを全て滅ぼそうとした界央の地の使徒マスティマ・ウンヴリエルは、現れたダークスレイヤーと激しい戦闘になり、多くの権能を使うも敗れて首を刎ねられている。
※その後、三章幕間『月を喚ぶ』において、ウロンダリアの神や大賢者、月の眠り人などが新たな月を呼んだり、荒れ果てた大地に『白い女』の二人が生命を蘇らせている様子が確認できる。
ラーナ・ハーリ(偉大なる物語の地)
意味は『偉大なる物語の地』。第一章で初出。
腕輪の姉妹フリネとレティス、及びルインの用いる魔剣ヴァルドラ、神剣アストラにゆかりのある地。黄金と美酒溢れる世界だったとされ、主神は黄金神アウラとされている。嵐と暴虐の龍神ヴァルドラと、雷の軍神アストラの長い戦いによって滅んだとされている。
バルド(戦詩)
意味は『戦詩』。第二章で言及される。
バルドスタ戦教国と戦女神ヘルセスの故郷。女神ヘルセスによれば、『もう住めない程に破壊された』との事。『人に優しくし過ぎたという理由で』界央の地の使徒たちに徹底的に破壊されたとの事で、バルドスタ戦教国の人々はこの世界からの避難民であるらしい。
エウダシカ(時の枝角)
意味は『時の枝角』。『果樹園と春雷』のエピソードで初出。
『蒼い城の秘神』の一柱、『春雷のラーナ』の故郷。この世界は滅びず、人々は神から離れて星の海に旅立ったらしい。
エウダシカは丸い天体や平らな地平の形はしておらず、とてもとても大きい、化石化した牡鹿の頭骨の形をしている。これは一説によれば『人なる神の時代』の前、『獣の時代』の世界鹿の一体の頭骨であるとされている。大きく雄大な世界鹿のほとんどは『原初の大征伐』において獰猛な狩猟の女神モーンによって狩られており、エウダシカももしかするとそのような由来かもしれない。
ラーンファース(廻る力)
意味は『廻る力』。『果樹園と春雷』のエピソードで初出。
『蒼い城の秘神』の一柱、『喜びのシルニス』の故郷。遊び心を失ってしまい、それが理由で滅んだと語られている。一説によればラーンファースは大変に元素豊かな地で人と神々は素晴らしい文明を築き上げたが、ある時から一気に堕落した彼らは自分たちが使役していた人口の生命によって主従を逆転されたとも伝わっている。
ア・シェ(連環帰結)
意味は『連環帰結』。『蒼い城と導きの灯火』で初出。
『蒼い城の秘神』の一柱、『導きの灯火のハルシャー』が主神を務めていた、別名を『ア・シェの六連世界』。光の二世界、中立の二世界、闇の二世界があったとされているが、闇の二世界は何らかの理由で滅んでおり、この滅亡を目撃したハルシャーは残る四世界も隠滅の為に滅ぼされる可能性に思い至って、それを防ぐために界央の地の道化、パロガの提案に従った。光と中立の四世界はおそらく現在も残っているはずで、その後についてはいずれ作中で示されるかもしれない。
ハーダル(雄渾)
意味は『雄渾』。『 彼らが恐れるのは、あなただけ……』はこの世界が舞台。
『蒼い城の秘神』の一柱、『炎赤の守護者ヴァルミス』の故郷。赤い炎の翼のマスティマの大軍によってほとんど焼き払われるが、現れたダークスレイヤーとの黙示録の戦いが展開する。マスティマの『罪の火』で焼かれたり、天の坩堝をひっくり返されて溶けた鉄の雨が降ったりと大変な災厄に見舞われるが、『白い女』の長女シルウェスティナがこの世界の再生を約束しているシーンがある。
ウダル・カ・ラ(遺棄された灼熱の地)
意味は『遺棄された灼熱の地』。『陽炎の憂い』前後編の舞台。
『原初の大征伐』において、神々の軍勢を大いに苦しめた闇の王ゴルムオーズが荒らしていた地。この地の最大の火山はゴルムオーズの住処でもあったハシュト火山だった。ゴルムオーズを討伐してのち、武神マリーシアが降り立ったこの火山は神聖な地として『聖なるハシュト山』と呼ばれるようになるが、どうにもウロンダリアにも同名の火山があるらしく、由来や経緯は謎に満ちている。
ディレニス(遅きに失した地)
意味は『遅きに失した』。氷の女王サーリャの故郷であり、彼女の過去の物語の多くはこの地が舞台。
無限世界の辺境は熱を失って世界の終焉の形である『氷獄』に閉ざされかけており、ディレニスもそんな世界の一つとされている。辺境世界の人々は自分たちの身体を低温でも存在できるように作り変えたり、あるいは特殊な代謝をする巨人などに姿を変えていったとの説もあるが定かではない。しかし、実際にディレニスには氷の巨人と呼ばれる人々とサーリャのような冷たい人々が存在している。
また、神々の宮殿『凍てついたグラネクサル』と氷の巨人の国ハインランドが現在のウロンダリアにも存在している点については謎が多い。
ミクタラ(深き翠緑の地)
意味は『深き翠緑の地』。間話『ミクタラの一日・前後編』に登場したほか、第三章の『二つの世界樹の都』の民が転移したらしい説明がある。
豊かな大森林と緩やかな川が多く、各所に化石化した世界樹の切り株の山が突出して見える地で、はるか昔に一度滅んだ後、『白い女』の末妹セルフィナと三女ミルフィルが世界を再生させたらしい。『白い女と嵐の古龍』のエピソードではセルフィナは世界樹の梢で眠り続けており、古龍ダカルダースが彼女の護衛と話相手の任に着く事になった経緯が語られている。
また、再生後のミクタラにおいてひときわ大きい世界樹は精霊イルシルヤのものらしく、この世界の再生にダークスレイヤーが絡んでいる事が示唆されている。
ガシュト(さざれ石の地)
意味は『さざれ石の地』。『ガシュト最後の日』に登場した、どうやらウロンダリアの『ガシュタラ万藩王国』の起源の世界らしい地。
浅く豊かで暖かな海と島の多いこの地は、その平和が無意味な停滞だとして界央の地の死の使徒オルハニエルに滅ぼされかけるが、現れたダークスレイヤーによって死の使徒が逆に倒されて封印され、武器を奪われてしまう。ガシュタラの人々は今でもこの地の事を『我らの魂の故郷』と呼んでいる。
アルシスリア(廻る水の珠の地)
意味は『廻る水の珠の地』。エピソード『アルシス最後の夜』に登場。
この地は人魚がとても多く、また多くの世界のいずこかの水場に繋がっており、精霊に等しい人魚たちの歌が水を美しく浄化・循環させる目的のある世界だった。しかし、深海にいつしか恐ろしい『混沌』が侵入し、人魚たちは各世界に散っていったとされる。
この地には美しい水上都市アルシスが存在していたが、現在このアルシスはウロンダリアに漂着して『水の都アルシス』として存在しており、あらゆる水にまつわる神々の神像が建つ壮麗な宗教都市となっている。
赤い星の都タラス
無限世界のどこかにある、とうに滅んだ世界を復活せんと試みる悔悟の天使たちの都のひとつ。
第三章の後日譚『赤い星のダンディリオン』に登場する。この世界は人間たちが相当に汚染したのち天使たちに焼き払われた地の一つで、特殊な二重連星に照らされ、猛毒の大気と汚染された赤い大地というまさに不毛の地。防護しない人間だとごく短時間で死に至るほどで、天使たちが既に数百年も再生に努めているがなかなかに結果が出ていない。
都市や堰堤は水を浄化しており、タラスの周囲にだけはごくわずかに清浄な水がある。天使たちはその姿をかなり自在に変えられるため、この都市や大気中を漂う浄化装置なども彼らが姿を変えた物であり、また時に集合体でそれを行う事もある。なお、タラスの最も高い塔は『悔悟と浄化の塔』といい、天使長たちの区画であるとともに、なぜか伝説の『船の民』もいたりと謎が多い。
なお、『タラス』は天使たちの真数言語においては『収斂箇所』を意味する言葉であって必ずしも街とは限らない。ここは厳密にはまだ無名の、赤い星に存在するただの収斂箇所に過ぎないとも言える。
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