第二話 影と鎖
──西の櫓、午後。
ルインの思わぬ申し出に、影人の皇女クロウディアは驚きの声を上げた。
「ええ⁉ もう私と立ち会い? ……こんなに早く? ……本気なの?」
「早い方がいいだろう? それに覇王ウロンダリウスの霊廟の探索にあたって、覇王の剣の謎が解けたのと、少し自分の力らしきものを思い出せたんだ。これをもっと追いかけてみたい」
「そんな事が⁉ チェルシーさんからざっくりとは聞いたし、霊廟から来た子たちにも驚いたけれど……」
「昨日は自分の心臓を自分で突き刺して少し疲れたからな。夜中には目を覚ましたが、しかし話す時間は無かったんだ」
「昨日も聞いたけれど、自分の心臓に剣を刺すなんてそんな事、普通の人にできるものではないわ……」
「しかし普通の人ではクロウディアの宿敵を倒せないのだろう? だからこれでいいんだ。少なくともおれの立場では」
クロウディアの薄水色の目には、迷いと思案が現れている。
「それはそうだけど、そんな単純な話に考えていいものかしら? でも……うん、いいわ、手合わせをさせてもらうわね」
「よろしく頼む」
こうして半時間ほどのち、十分に準備したルインとクロウディアは初の手合わせをする事になった。初めは試合のよう当たりを取りつつ、状況次第で真剣勝負に移行していく流れで、シェアの回復の祈願によって修復できる四肢の欠損までは認めるが、これは双方合計で四か所まで、という、なかなかに過酷な条件だった。場所は櫓の広いバルコニー部分で行い、魔王の城からは『凝視する者』などと呼ばれる視界を飛ばす巨大な目玉の魔物が何体か遣わされてくる運びとなった。
バルコニーの屋内側ではシェアを含む何人かの眠り女たちが戦いの行方を見届けることにし、羽根の生えた目玉といった見た目の『凝視する者』たちは、広いバルコニーの四つ角の上空に漂う。
ルインは黒色のシャツとズボンに革のブーツ、といういで立ちで、対するクロウディアは革を貼った黒い鎧上衣に黒いズボン、邪魔にならないように上げ髪にした凛々しい立ち姿だった。その手には影のように美しい曲剣が握られている。
「双方準備は良いですね? では、眠り女を代表してこの私、チェルシー・ネアが公式な立会人をやります! 必要であれば『時間の減速』を使ってでも判定しますから、魔術や魔法による高速の戦いをしてもらっても構いませんからね? そして、怪我はシェアさんが対応します。腕や足が二人合わせて四回ちぎれるか、どちらかが参ったと言えば戦いは終わりです。いいですね?」
銀のはたきを手にしたチェルシーが双方にルールを確認する。ルインもクロウディアも無言で頷いたが、クロウディアが意を決したように口を開く。
「ルイン、きっと何かの力が発現し、覇王の剣の謎を解いたから、私の心を早めに楽にしようとしてくれているのね? その気持ちは嬉しいけれど、あなたは私がどんな敵と戦おうとしているか、きっと理解していない。だから、あなたの気持ちに応えて一瞬でけりをつけるつもりで行くわ!」
眠り女たちには緊張が走る。
「双方いいですか? では……はじめっ!」
「はあっ!」
影のように踏み込むクロウディア。その意外な速さと鋭さにルインは一瞬の感心を挟みつつも、その体はほぼ無意識なほどに滑らかに対応し始めていた。
ルインは大剣だったオーレイルを片手半剣の大きさに縮小しつつ、左足から頭頂に回る弧を描いた。クロウディアの曲剣の素早い突きの目的に対応した形で、初撃は素早い踏み込みからの三連突き。しかしこれは全てルインの剣に阻まれて鋭い音を立てた。続けざま、ルインは両手を絞りつつ一瞬の背を見せ、大剣での横薙ぎを仕掛ける。
クロウディアの眼が見開かれて一瞬の驚きがよぎる。さらにクロウディアは回転しつつ横薙ぎを放つはずのルインの足の運びに不気味な不自然さを感じた。軸足を回すのは問題ないが、左足の踏み込みが深い気がし、他の違和を見るともなく探す。すぐにルインの剣の掴みの緩さを見つけた。さらなる変化の予感にクロウディアの肌が粟立ち、迷いは攻撃を防御に切り替えた。
案の定、回転するルインの肩の向こうに見える剣は形を変え始め、柄の軸を握っていた左手は大きく開いている。
クロウディアは大きく跳び退ったが、その右肩に形を変えた黒曜石の剣オーレイルの幅広の槍の刃がかすった。
「覇王の剣をもうそんなに使いこなすなんて!」
「強いな。初撃は速かった」
「我が暗黒騎士団でもあの初撃を防げる人は団長たちくらいのものよ?」
「希望が見えてきたかな?」
「驚いたわ。あなたの力は何か戦いに関する能力だと思ってはいたけれど、少なくとも経験か才能またはどちらもが、魔王様が言う通り凡百のものでは決してないわね!」
「君みたいなやんごとない人にまでに親切にしてもらっているのに、よくわからない簒奪者やらにみすみす渡すようでは筋が通らないからな」
どこか余裕のあるルインの言葉に、クロウディアは困惑を隠すように笑みを浮かべた。
「ありがとう。……なら、本気で行かせてもらうわ!」
クロウディアの立ち姿から、何かが落ちていくように光の反射と生気が消え、その眼は影のように黒くなった。
「影は防げず、そして傷つかない! ……『強き光源』を!」
クロウディアはその背後にまばゆい二つの光源を浮かばせた。そして、その影がルインの方に伸びきたる。
「なんだ?」
ルインは歴戦の経験か天性の勘で飛びのいた。伸びた影から影そのものの薄く鋭い刃が何本もの槍の様に伸びる。さらにクロウディアも素早く踏み込んできた。ルインはその曲剣を受け止めようとしたが両腕から輪切りにされたように血が噴き出し、剣を取り落としてしまった。灼けるような痛みが走る。
「そう来るか!」
「ルイン様!」
シェアの叫ぶ声がした。クロウディアは攻撃の手を止める。
「シェアさん、治癒の祈願をお願いします。……ルイン、これが私たち影人の力なの。影を自在に操りよく刃や槍に変え、大きさや姿もある程度自由に変え、影を纏って鎧や筋力にすることも可能なのよ。そして強力な魔法の武器や混沌の武器でない限り、影を破る事はできないの。だからかつて私たち影人は『混沌戦争』で大きな戦力になったし、暗黒騎士団の団長たちは混沌の神々を何柱か狩り、混沌の武器を奪う事さえできたのよ」
「なるほどこれが……しかし、腱までは斬らないでくれて優しいな。これは少し情けない。……しかし次は喰らわんよ」
「えっ? まだやるの?」
「当たり前だ」
「ルイン様、治癒の祈願を!」
シェアが駆け寄ろうとしたが、ルインはそれを断った。
「これくらいなら大丈夫だ」
ルインは立ち上がって両腕を交差させると、深く息を吸い込んだ。
「戦場では、片腕が落ちても戦いは止まらない」
ルインの首や肩や腕の筋肉と血管が、見ていても分かるほどに一瞬盛り上がり、鋭く左右の腕を払うと血が飛び、傷跡がもう閉じている。クロウディアの目が驚きで見開かれた。
「それは古王国の拳闘の国ダラギの技と似ているわね。気力を充実させて、出血さえ制御する技。……存外、あなたは本当に希望かもしれないわね」
「かもしれない、では駄目だな。なら次はその影の刃も断ち、防いでみせるよ」
ルインの言葉が終わると同時に、二人は弾かれたように間合いを取った。
「ルイン、腕の二本は最初に謝っておくわ!」
クロウディアは二つの光源の位置を操作し、影が伸び来た。しかし、ルインは槍を剣に戻した姿勢のまま動かない。その様子にクロウディアは何らかの手の内がルインにある事を感じ取った。
再び無数の影の刃が伸びたが、ルインの前に乱雑に交差する黒い鎖の壁が現れ、影の刃はそれに全て防がれ、弾かれた。耳障りにきしむような音が続いて一通りそれが終わると、クロウディアは驚愕の表情を浮かべた。
「全て弾いた? 影の刃が通じない⁉」
眠り女達からも驚きの声が上がる。
「何とかいけたか。駄目だったら細切れになっていたかもな。しかし、どうやらこれで防げると」
「それは! それがあなたの力の一部ね?」
ルインの腕や体に、蛇のように流れる黒い炎がまとわりついており、それが消えた。
「まあ、そうなるのかな?」
「嬉しいわ。……なら百条……いえ、千条の影の刃はどう?」
クロウディアの言葉と共に影は刃の波のようにうねり、獰猛な無数の刃がルインに襲い掛かろうとしていた。さらに、クロウディアは影のような曲剣から剣技とも剣舞ともつかない、優美かつ素早い連撃を放つ。飛ぶ影の斬撃が加えて放たれた。
眠り女たちはその手数の多さに再び驚く。
しかし、ルインのやや手前の空間に今度は黒い鎖の壁が立ち上がると、それらの攻撃も全て弾かれて消されてしまった。
「何という障壁を!」
「ひき肉にならずに済んだが、君は見た目よりずっと強いんだな、クロウディア」
「どういう力なの? 分厚い鎖の壁で影の刃を全て弾くなんて……!」
「通じて良かった。思ったより早く安心させられそうだな」
ルインはゆっくりとクロウディアに向かって歩き始めた。
「首元に剣を突きつける。それで終わりでいいな?」
「いいえ、まだよ!」
クロウディアは跳び退りつつ、左手に持ち替えた黒い曲剣の刃をなぞり、何かを投げつける動作をした。何かがびしびしとルインの影に当たる音がした。
「なんだ?」
次の一歩を踏むはずだったルインは、その姿勢のまま全く動けなくなり固まった。
「今のは『影縫い』よ。影の世界で鍛えられた鋼の刃で、あなたの影を縫ったわ。あなたの両手と両足をね。無理に動けば実体のほうが傷つく仕組みよ」
「そんな技もあるのか」
ルインには両手首と両足の腿のあたりが固定されているような違和感があり、それで動けなかった。
「剣を突きつければ私の勝ちね……うっ⁉」
「まあ似たような事は出来るぞ?」
いつの間にかクロウディアの全身に黒い鎖が巻き付いており、動きをほぼ完全に止められていた。
「こんな……事まで? ……動けない!」
「いや、もう少し便利だ。確か……こんな事もできる」
ルインのやや前の床に黒い鎖が渦巻いて、暗い穴のような空間が開くと、所々が黒く焦げた古い鋼の長剣が切っ先から持ち上がってきた。その剣は柄から太めの鎖が伸びており、まるで鎌首をもたげた蛇のようにクロウディアのほうへと移動し始める。
「まだよ……まだ! 影人の力はこんなものではないの!」
クロウディアの影から巨人のような影が立ち上がると、樽ほどの大きさの拳を持つ腕が現れ、ルインの動かしていた鎖の剣を握り、その動きを止める。
「そんな能力も持っていたのか!」
「それは私が言いたいわ! 切り札まで使う事になるなんて……! そして、影人に拘束は意味がないわ!」
クロウディアの全身は黒くなり、鴉の群れと化して違う場所に実体化した。
「ほらね、こういう事もできる!」
「なら、こうだ!」
海の波が広がるように鎖がバルコニーのほとんどを埋め尽くし、一斉に動いて今度は隙間なくクロウディアを拘束する。眼のわずかな隙間を残してクロウディアはほぼ完全に鎖に包まれた形になった。観戦している眠り女たちからどよめきが上がる。
「こ……こんな量の鎖を?」
「烏に分裂できないだろう? より小さなものになったとしても、それも拘束する!」
「く……!」
「そのまま締め付けることもできるぞ?」
ルインとクロウディアの双方が動けなくなった。状況はそれでもルイン有利に見えている。
「そ……れならっ!」
ルインはここでさらなる何らかの力を感じて、クロウディアにはまだ策があるのかといぶかしむ。しかし、チェルシーが散発的な拍手をしつつ割って入った。
「はーい、お二人ともそこまでです! それ以上手の内を出すのは良くないでしょ? 終わり終わり! クロウディアさん、ご主人様の実力に納得しましたか?」
「……ええ。私はもう十分よ」
「それなら、おれももういいかな」
ルインの言葉にはまだ余裕が漂っている。二人は影と鎖の力を解放し、自由な状態になった。
「クロウディアと影人の力というものは本当に強いな」
「優しい嘘だけど、気を使わなくていいわ。対峙してみてよくわかった。ルイン、あなたの戦いの引き出しは、まだまだこんなものではないわね? きっと、思い出していないか……ううん。着替えて、少し休んで出直して来るわね、ありがとう」
クロウディアは言いよどみ、それだけ言うと足早に立ち去ってしまった。何となくだが、声をかけない方が良さげな空気が漂う。
「クロウディアさん、怪我とかは大丈夫だったんでしょうか?」
シェアが心配そうにしている。
「怪我はさせてないはずだ」
「……なら、そっとしときましょ? きっと少し複雑になっただけだと思うけど、悪い事ではないはずですし、ね?」
チェルシーがシェアに微笑む。
「やりすぎた……って事はないと思いたいが」
「大丈夫ですよ。クロウディアさんの不安を早く取り除いてあげたかったの、きっと伝わっていると思いますよ。まあ、お茶にでもしましょうよ?」
眠り女たちの集団から体格の良い亜麻色の髪の女が笑みを浮かべて出てきた。ルインにも見覚えのある、工人と呼ばれる器用な種族の眠り女アゼリアだった。
「ルインお兄さん、見てたよ! 見た事ない力を扱えるんだね! あれもすごかったけど、さっきの戦いに銃があったらお互いにもっと意表を突いた戦い方が出来たり、手数も距離も稼げると思わない?」
「確かにそうだが、確か銃は君ら工人族しかほぼ使えない決まりではないのか?」
「正確には、私たちと、私たちとかなりの信頼関係を築けた人たち、ね。そして、例えば影の力を込めた弾丸とか作れたら、きっとクロウディアさんの役にも立つと思うのよ。クロウディアさんと話す機会があったらこの件を話してみてもいいかな?」
「悪い話ではないように思える」
「決まりだね! じゃあまた! ……お兄さんの銃も用意するから、時間が空いたら声をかけてね?」
「おれのも? ありがとう」
「どういたしまして! 私たち工人の都市国家ピステの件もよろしくね!」
「そうだな。対応してみるよ」
場の雰囲気も解散気味になり、女の多い場所から部屋に戻ろうとしたルインにラヴナが素早く近寄ってきた。
「やっぱり見た事ない力だけど、その力をかなり使いこなしている雰囲気を感じたわ。ルイン様は謎が多そうね」
「あまり見当もついてない。ところで今日の立ち合いだが、あれでクロウディアの宿敵を倒せるかな?」
ラヴナは真顔になり少しだけ考え込んだ。
「うーん、安心はできないかな。影の国の暗黒騎士団長は、『混沌戦争』の際に混沌の神々から戦斧と大剣を奪っているの。それに対処できないと難しい思うわね。『混沌』の強力な武器は特別な性質を持つから」
「しばしば名前が出るが、『混沌』の武器とはどんな性質を?」
「簡単に言うと、弱い武器でも鋼であろうが何であろうが溶かすように切っちゃうのよ。『混沌』は全てを無秩序にしてしまう力だから、例えるなら、熱くしないで鉄を溶かし切るみたいな感じ。そして強いものは、その持ち主の神の領域と繋がっているから、眷属を呼び出して場を『混沌』に近づけちゃったりするのね。なので、八百年前の戦いで得た混沌の武器の強力なものは、全てみだりに使えないように封印されているのよ」
「そんな武器を使ってくる可能性があるのか……対処方法は?」
「こちらも同じくらい強い『混沌』の武器ならやり合えるけれど、強力なものほど、手に持つのは難しくなっちゃうの」
「つまり、手や籠手が溶けたり?」
「それならまだよくて、触れた手から全身が混沌に蝕まれて化け物と化してしまう事も少なくないのよ」
「それは難しいな」
「でしょう? 『混沌』は一筋縄ではいかないから、ルイン様も気を付けて」
「『混沌』か……」
──『混沌』の神々の侵入はウロンダリアに多くの災いをもたらし、八百年を経た現在も変容して人が立ち入れないままの地域も多く、また時の流れも一定ではないとされている。おかげで、私たちには正しい歴史の流れというものが無い状態だ。
──大賢者アルヴェリオーネ著『混沌、その後のことについて』より。
クロウディアの私室。
クロウディアは鎧上衣とズボンを脱ぎ、下着姿でベッドに身を投げ出した。自分の問題に解決の糸口が見えてきた事がまだ信じられなかったのと、対峙したルインから感じられる不思議な空気は、宿敵であるアレクシオスや、父であるダーサ一世をも凌いでおり、かつての父の言葉が思い出された。
──気を付けるがいい。本当に強い者は時に全く強そうに見えない事がある。しかし、戦ってこれに気付けば、自分の浅はかさと足りない経験を思い知ることになろう。
混沌の武器への対処ができれば造反者アレクシオスを倒せる気がしてきた。絶望の闇の彼方に小さな希望の光が見えつつある。
「でも……」
クロウディアは独り言ちていた。
ルインはどんな人物なのか? という強い興味が湧いてきていた。しかし、当の本人でさえ記憶がなく、両親が『眠り人』であるクロウディアは、過去の『眠り人』が以前の記憶を取り戻す例がほとんどないと知っていた。さらに戦い方さえ謎だらけで、あの鎖は何なのか見当もつかなかった。
しかし、クロウディアが本当に悩ましいのはそこではなかった。ルインの目には欲望も興味も読み取れず、善意で請け負ってもらうにはあまりに危険の大きい自分の問題に対して、もしも解決した場合、自分の身一つしかない事に思い至っていた。ルインがきわめて鷹揚かつ義に篤い男だったとして、自分自身に特に価値を見出していなかったらどうしたらいいのかとクロウディアは考え始めていた。
長い溜息の後、クロウディアはいつしか眠りに落ちてしまった。
──影人の皇帝ダーサとその妻マヌはどちらも眠り人で、『混沌戦争』の英雄でもある。そんな二人の奇跡的な子として生まれた影人の皇女クロウディアは、ウロンダリアでは知らぬ者がいない程の人気者でもある。
──ラウダ・アステフェリオン著『ウロンダリアの著名人』より。
再び、バルコニー。
ルインとクロウディアの手合わせの立会人を務めていたチェルシーは、皆が立ち去った後のバルコニーの床を注意深く調べては何の変化もない事を確認すると、次に魔王城から来ていた有翼の大きな目玉の魔物『凝視する者』が飛び去る様子を見ていた。五体の『凝視する者』が、次第に上昇し始め、やがてふっとかき消える。
「これで良し! と。……ん?」
チェルシーは魔王の城から来た『凝視する者』が、最初は四体で、いつの間にか一体増えていたことに気付かなかった。
──『凝視する者』は魔の国の情報伝達で貴重な役割を果たしている。この目玉の化け物は人工の存在であり、魔術的な特定の手順を踏めば、魔族なら誰でも呼び出せる。
──コリン・プレンダル著『魔の国キルシェイドの歴訪』。

初稿2020.01.29
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