第十八話 荒野の軍神

第十八話 荒野の軍神

 二つの世界樹せかいじゅの都、湖上こじょうの術式の地平の上。

 明け始めた空の下、失われた世界ヴァドハルの戦乙女いくさおとめとして最後期の装束に身を包んだジルデガーテは、その目から狂気が失せていることもあり、ルインには勇壮で美しく見えていた。

(美しいが、しかし……)

 ルインの困惑を察したのか、ジルデガーテは自嘲気味じちょうぎみに笑った。

「何を考えているかわかるぞ。高潔こうけつさの無い者たちは我らをそのように解釈してあこがれた。それを利用して我々は戦士を増やしたが、結局のところ戦士とは心の在り方だ。我が故郷ヴァドハルの滅亡は決まっていたのかもしれん。私は……」

 ジルデガーテは緩く握った拳を胸元にあて、ルインにはそれが吐き出しがたい何かを吐き出そうとしているようにも見えていた。

「言いたくない事は無理に言わなくてもいい」

 ルインの言葉に押されるように、ジルデガーテは話を続けた。

「私はそうすべしと命じられて若い蛮族ばんぞくの王子をそそのかして勇者に仕立て上げた。武功を立てたその男は次第に私との関係を望むようになり、しかしそれが良い事ではないと考えた私は断り続けた。それは私の考える戦乙女いくさおとめの在り方ではないからな。……だがある時、あの男は卑怯なやり方で私をわがものにしようとした。だから私は殺したのだが、それがヴァドハルの戦士の時代の終わりでもあった」

 ルインは真剣にジルデガーテの話を聞いている。離れた場所で大きなドードー鳥の背に座っているティアーリアもわずかに思わし気な目で成り行きを見守っていた。長い沈黙の後にジルデガーテは再び話を続ける。

「戦士の質が劣るようになったヴァドハルはつ世界たる無限世界イスターナルでその存在感を失い、やがてより大きな武威を誇る他世界の入植地となり、追われた我らは長く時と世界のはざまを彷徨さまよった。逃避の旅よりも、私の責を問われ続けるようなこの日々が耐えられない。正しくあろうとすれば狂わねばならん。いつしか人々は私を正義に狂った狂乱の戦乙女と呼ぶようになったのだ!」

 再び長い沈黙。ルインはおのれの肩にあたり始めた朝日が、今日も暑くなることを予見させてふと笑った。

「その笑いはどういう意味だ?」

「意外と……いや、かなり真面目な理由が『狂乱』の由来だったのだなと。もう少し派手な戦いになると思ったが、こんな深いのも嫌いではない。そして、この技の冴えと話の経緯は理解した。スラングロード王はこの話を?」

「知っていた。だから『約定やくじょうの壁』に私の名を刻んでくださったのだ。王は私との戦いは望まれなかった。『武の戦いは不得手だ』と言っておられたな」

「この試練に納得したようだが、この後どうなる?」

「私はお前とは敵対しないし、お前がこの後『約定の壁』を見た後はお前の命令も聞こう。とはいえ、私はお前に『試練』を科し、普通の人間なら命がいくつあっても足りない状況に追い込んだ。『処刑者しょけいしゃの大剣』を持っているなら私の首をねたくばねればいい」

 この言葉に、ルインは六角棍ろっかくこんにしていたオーレイルを左手に持ち換え、右手に『魔族の処刑者の大剣』を呼び出した。朝日に鈍い光を跳ね返す剣身を裏表に回し、眩しそうに目を細めると、その目をジルデガーテに向けて笑った。

「女の首を刎ねるなんてお断りだな。気分が悪い。それよりも、何だか狂気の度合いが減っていないか? こう言ったら怒られそうだが、空から笑い声をあげながら大技が降り注ぐような戦いを想定していたんだがな……」

「拍子抜けしたか?」

「……まあな。何か理由が?」

「それは私の誤解にるのだが、私はお前が魔族の姫たちと実に乱れた関係になったとんでもない男だと思っていたのだ。それが気に入らなかったし、そんな男が『約定の壁』を受け継げば夜伽よとぎを命じられるかもしれぬからな」

 ルインはこの告白に声を出して笑った。

「ふ、そうか。それは確かにそうだろうな。しかしそんな事は起きないと思う。どうやらおれの役目は花園の番人のようなものらしいし、番人が花を摘んでは本末転倒だろう?」

 ジルデガーテはこの軽口にわずかに笑みを浮かべた。

「面白い事を言う。しかし解せぬのは……」

 ジルデガーテが疑問を口にした時、ティアーリアが一瞬で二人の側に移動した。

「ジル、そしてルイン様、二人の疑問に答えておきますね。私たちは『夢繋ゆめつなぎ』で少しだけルイン様の心に触れています。あの広大な夢の世界を旅する過程がまさにそれで、私たちは長い男性不足と孤独から解放された形になっているのです。しかしこれは私たちの魂の気配が少しだけルイン様に残り、これをジルは深い仲になっていると勘違いしたのですよ。私たちの魂そのものに存在している強大な魅力は、大抵の男性にはあらがえない類のものですからね。なのでジルにはルイン様がとんでもない好色男に見えたのですよ」

「何だと……ティアーリア、勝手にそんな事をするのは失礼ではないのか?」

 ティアーリアはジルデガーテには答えず、ルインに向き直った。

「ルイン様、これはジルの言う通りではあります。私たちの魅力にとらわれず、かと言ってお嫌でもないようなので急いで説明はしませんでしたが、何か不快感や不都合があれば謝罪します。知らない女たちに触れられた形になっていますしね」

 ルインは『魔族の処刑者の大剣』を己の領域にしまいこみ、事も無げに笑った。

「全く問題を感じていないし、特に気にもしない。役に立っていたならそれでいいと思っているくらいだな」

 この即答にティアーリアは目を細めて微笑み、ジルデガーテに向き直った。

「ありがとうございます。だ、そうよジル」

「信じがたい鷹揚おうようさだな……。しかし眠り人、それが何を意味するか分かっているのか?」

 ジルデガーテは露出の多い甲冑から白銀の鎧下を着た姿に変わった。

「意味?」

「あっ……」

 ティアーリアが声を上げたが、ジルデガーテは少し強引に話を続けた。

「いいか眠り人、我ら魔族の女は高慢こうまんに過ぎるほど矜持きょうじが高く、自分たちの要求に見合う心を持った男でないと堕落だらくしてしまうはかない存在でありながら、とても強い魅力を持っているのだ。大抵はそれで寂しさに耐えらず妥協して次第に堕落してしまう。しかし、お前のような男は我らを堕落させない得難い存在で、故に……恋人や夫のように大事な存在になっているぞ。お前が居れば心の安定と美しさを保ちやすいからな」

「ああ……言われてしまったわね」

 ティアーリアはばつが悪そうに笑っている。

「恋人や夫……それは心の安定という意味で間違いないかな?」

「そうなるだろうな」

「そうなりますね。お嫌ですか?」

 ジルデガーテとティアーリアはルインが何か慎重な対応をすると思っていた。しかし、間を置かずに出た言葉は意外なものだった。

「おれ自身はだからと言って特に何も求めはしないし、心の安定に役立っているならつまり、皆の自由に寄与しているのだろう?」

「自由? まあそうとも言えますが」

「ならそれでいい。そんなに大っぴらにしたい話でもないだろうし、それで」

「そうか。少しおかしいと思うがまあいい。つまりお前は魔族の姫たちの心の支えでありつつ番人であり、かつ私の首を刎ねる気も無ければ狼藉ろうぜきをする気も無い、と。本当におかしな男だな。……待て、この気配は?」

「あら?」

「これは……」

 ジルデガーテの少し不器用な笑いは何かに気付いて怪訝けげんなものになった。ルインとティアーリアも異様な力の気配を感じ、三人は湖上大桟橋こじょうだいさんばしのほうに自然と目が向いた。

「ティアーリア、あれは?」

 ルインたちの視線の先に、清々しい夏の夜明けとは対照的な黒く禍々まがまがしい魔力のもやをまとった黒いフードとローブ姿の何者かがいた。正確には黒いぼろ布を纏っていると言った方が良いような衣装で、瓢箪ひょうたんのぶら下がったびた槍を杖にし、肩には骨だけの大きな鳥がとまっている。

「あら、珍しい来客ね。……ルイン様、あれはおそらくジルの主ですよ」

 ティアーリアは途中から声をひそめた。

「あれは……なぜここに?」

 ジルデガーテは困惑している。

「礼を尽くすべく、こちらから参ろう」

 しわがれた声とともにぼろ布の人物は滑るように湖上を移動し始めた。ルインはその人物のフードの中から二本のきらきらした細い棒が突き出ている事に気付いたが、顔は暗い影になっており見えない。

「あれは矢か?」

 ルインは小声で疑問をつぶやく。

 やや離れた場所に静止したぼろ布の人物はやはり、まるで両目を射抜かれたように二本の黄金の矢が顔から突き出ていた。異様な風体だが顔は影になって見えないままで、肩にとまっている骨の鳥は首をせわしなく動かして周囲を見ている。槍を持つその手も骨だった。

 異様な人物はわずかに頭を傾けた。

「お初にお目にかかる。キルシェイドの眠り人ルイン殿。わしは上位魔族ニルティスの中でも強大なるダイオーンの端くれヴォーダン・ヴェンと申す者。人々は時にわしをして『荒野の軍神』と呼ぶこともあるが、今のわしは嘲笑ちょうしょうされ老いぼれた死せる者。しかしながらかつての我がヴァドハルの威光が今もしばしばよみがえって口惜くちおしゅうて休めぬ。このわが目に射られた黄金の矢のせいよ」

──強大な上位魔族ニルティスダイオーンの一柱『荒野の軍神』ヴォーダン・ヴェン。

 ルインの側に寄ったティアーリアはルインの腕にそっと触れた。ルインの頭の中にティアーリアの声が聞こえてくる。


──これは上位者の『佯狂ようきょうそう』です。つまりこの姿は見せかけです。敬意を払う事を心がけてください。お気を付けて。

 ルインは胸の前で右拳を左手で包む武人の礼をし、この奇妙な客に声をかけた。

「お初にお目にかかる。荒野の軍神ヴォーダン・ヴェンどの」

 ルインはあえて何かを聞くような言葉は用いず、慎重に挨拶だけを返した。

「わしは頼みごとが多く、礼節を通されるとすでに申し訳ない気持ちで死にたくなるのう。既に死せる身だと言うに」

 ヴォーダン・ヴェンは笑っているのか不気味に身体を揺らす。その後、骨の手で空を指さした。

「まずは南の空を見てみると良いぞ。そろそろ……」

「空を? あれは……?」

 南に広がる森の上空に、光り輝くもやが揺らめき、それは風に流される雲のように近づきつつあった。『望遠』の術式を使ったのか、指で輪を作って覗いたティアーリアとジルデガーテはほぼ同時に声を上げた。

「何だこれは? まさかこれはモーンの……!」

 ジルデガーテの驚きにティアーリアが言葉を継ぐ。

「何が起きたの? これ、獰猛な狩猟の女神モーンの『荒野の狩り手ワイルド・ハント』よ! ものすごい大軍。どこかの国でも滅ぼすつもり? ううん、そもそも誰がこんなにモーンを怒らせたの?」

──モーン様を覚えておいでですか?

 ルインはバゼリナの言葉を思い出すと同時に、彼女がそんな質問をした意味に気付いた。

「なるほど、再会が近かった、と」

 ため息交じりのルインの言葉を誰も拾えなかった。空一面に角笛を持つ勢子せこ、弓を持つ狩人、二頭立ての戦車を駆る射手たち、銃を持った狩人、旅の戦士のような者、騎士のような者、人ならざる種族も含めた雑多な大軍が風に流される雲のように空を滑っていずこかへと移動していく。

──我らはモーン様の使徒しと、永遠の荒野の狩り手なり。

──獣ならざる獣の血は大地をけがし、我ら狩人の仕事に泥を塗る。

──モーン様よ、我らが狩人の女王よ、我らはその黄金の千の矢の一矢とならん!

──我らはモーン様の射手。汚らわしい混沌カオスの獣に千の矢を射ん!

 『荒野の狩り手ワイルド・ハント』たちは恐ろしくも勇壮な歌を唄いつつ空の彼方へと散っていった。

「ルイン様、これはとんでもないことが起きていますよ。何が起きているかは分からないのですが、あれは獰猛な狩猟の女神モーンに仕える『荒野の狩り手』と呼ばれる者たちです。あの規模だと邪悪な神の介入の気配さえしますね」

 ティアーリアが空から視線を外さずに説明した。それが終わるとヴォーダンが笑っているかのように体を揺らして話を継ぐ。

「手ぶらではいかんと思い、何が起きているか手土産代わりに説明しておきたいのだ。北の大国、黒き国オーンで大変な異変が起きておるぞ。おそらく『混沌カオス』の侵入が起きておる。モーンはそれを察知していち早く『荒野の狩り手』を差し向けたのだ。黒き国オーンはルイン殿、そなたの眠り女をしておる狼の魔女ファリスと縁が深い。何か動く事になりそうだのう」

「わざわざのご忠告、感謝の至り」

 ルインはこの言葉にあらためて『武人の礼』をして感謝を述べた。

「感謝と申したか。それではルイン殿、まず感謝の返礼として、そこなジルをそなたの戦乙女いくさおとめとして役割を与えて下され。そなたに関わっていればいずれ狂気は鳴りを潜め、戦乙女として良い仕事をするに至るはずだ」

「ヴォーダン様、それはいかなる意図で?」

 ジルデガーテは目を丸くして驚いている。

「わしは今は亡きヴァドハルでは名が通っており、ジルめにも命令が出来る立場であった。しかし、この矢に射られた両眼を見ても分かる通り、わしの勢いは全盛期のようには戻らぬ。一方でジルめはまだ落ちぶれてはおらぬ。勢いあるそなたが身柄を預かってくれれば輝きを取り戻すこともあろう。そう願いたいのだ」

「自分は構わないが、しかしジルデガーテは、彼女の意志は?」

 ルインはジルデガーテを慎重に見やった。

「ヴォーダン様がそう仰るなら、私は従うしかない。その条件で様々な力を与えてもらった経緯があるゆえな。よって私はお前に仕えるぞ、眠り人よ」

「そうか……」

「……嫌そうに見えるが?」

「気持ちの整理がつかないだけだ。すぐに落ち着く」

「……」

 微妙な空気が漂い、ティアーリアだけが笑いをこらえていた。しかし、ヴォーダンはルインの様子に何か思う所があったのか、肩にとまっている骨の大鴉おおがらすと短い会話を交わし、ルインに語り掛ける。

「今までの経過を省みればルイン殿のその様子も無理もなかろう。しかし一つ面白い事実を伝えておくか。ジルは大変な武器の収集家だ。そなたと気が合う部分もあろうぞ。例えばエデンガル城のおのれの部屋を武器庫のようにしたとして、それに大いに感じ入り目を輝かせるのがジルデガーテという女だ」

 ヴォーダンのこの話にティアーリアが真顔になったが、ルインは気づかないで相好を崩した。

「興味深い話だ。実は少し前に、エデンガル城の自分の部屋を武器の鑑定や保管を行っていた部屋にしたら、ある兎に散々にこき下ろされたばかりで」

 苦笑するルインの言葉に今度はジルデガーテが反応する。

「何だと眠り人、まさかお前、自分の部屋をエデンガル城の武器鑑定・保管室にしたのか?」

「その通りだ」

「ほう……なかなかに興味深いな」

 ジルデガーテの目に明らかに好奇心の輝きが見えている。

(そういう面がある事を忘れていたわ……)

 ティアーリアは自分にとっての面倒が増える可能性に気付いたが顔には出さない。ヴォーダンは話を続ける。

「友好の証として、わしはそなたの工房で動かせるよう、鍛冶仕事かじしごとに長けた何人かのスレッギ族をそなたの元に向かわせる事にした。そなたの武器の収集の一助になるであろうぞ。魔城の工房は素晴らしいゆえな」

 この言葉にルインの目が輝く。

「何という有難い申し出を!」

「なに、わしは三つの頼みごとをすべく浅ましくもそなたの元に参った次第。ジルの身柄の件は良いとして、あと二つの頼みごとを聞くだけ聞いてくれぬか?」

「ぜひ聞かせて頂こう」

「うむ。一つはこの地の森や山々をわしがたまにうろつく事を認めてもらいたい。理由はそなたがこの後手合わせするであろう溶岩蜘蛛ようがんぐもの王ヴァトムが、わしの旧知の友だからだ」

「ああ確かに、それは事実ですね」

 ティアーリアが裏付けをルインに説明する。

「申し上げにくいが、ヴォーダン殿があるがままにある事で何か問題が発生することはあるかな?」

「わしは何らかの答えを欲するものに代価と引き換えに示唆しさに富む助言を示す事が多い。しかし、それだけだ。わしを探して人々が荒野を探索することに意義があると思うておる」

「それも事実ですよルイン様。危険な存在ではありません」

「それなら了承する。良好な関係でありたいものだ」

 ルインの申し出にヴォーダンの肩が笑うように揺れた。

「聞きしに勝る鷹揚おうようさと即断は実に小気味良いものよ。では最後の頼みとなるが、ルイン殿、何年かかっても良い。わしの妻になっても良いという女を見つけて下さらぬか?」

「妻? なるほど……」

 ルインはしばし腕を組んで考えた。ティアーリアは黙って微笑し、ジルデガーテは困惑の表情を浮かべている。やがてルインは笑って答えた。

「どうやら今後も多くの国や人々と関わることになる予感がある。その日々の中でヴォーダン殿の妻になっても良いという女性を探す努力をさせていただこう」

 ヴォーダンの全身を蒼暗あおぐらい炎が包み、顎髭あごひげを生やした細面のいかめしい老人の顔をした生身の姿となった。しかし両目に黄金の矢は刺さったままで、ほおに痛々しい血の跡が残っている。

「黄金の矢の激しい痛みも和らぐ心地よい申し出よ! この頼みが成就したあかつきには、そなたは計り知れない利を得るであろう」

「ところで、その矢については聞いても良いものなのだろうか? 誰も聞かないのでどうかとは思うが」

 ルインのまっとうな疑問にヴォーダンは口元に笑みを浮かべた。

「やっと聞かれたな。わしの両目にこの黄金の矢を射たのは先ほどの『荒野の狩り手ワイルド・ハント』どもの主モーンだ。この矢の呪いでわしは妻をめとれぬ。つまりそなたはまず、わしの黄金の矢の呪いを解く必要が出てくるのだ」

「何だって?」

「私はそんな話を聞いたことも無かったが……」

 ルインとジルデガーテは困惑している。一方で、ティアーリアはあからさまに不機嫌そうに言い放った。

「ヴォーダン、たばかるような話の持って行き方はどうなの?」

 穏やかだった空気は一変し、不穏なものとなっていた。

──荒野の軍神と呼ばれ畏れられるヴォーダンについては詳しい事は分かっていない。狂乱の戦乙女ジルデガーデと繋がりがあり、元居た世界が同じだとの説もある。彼は荒野を彷徨い、おのれ自身を嘲笑ちょうしょうしつつも、求める者には有益な助言を与えるとされている。

──コリン・プレンダル著『ダイオーン録』より。

first draft:2023.4.11

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