赤い月シンの魔物

甲虫バルヂム・ギラ

 第三章、二つの世界樹の都テア・ユグラ・リーアにおける戦いで、カルツ族の猫の剣士たちが迎え撃ったのがこの甲虫の群れ。甲虫とは呼ばれているが混沌の影響を受けて八本足であり、また正確には菌類に分類されるような生物である。牙と鋏、ドリル状の鋭い口吻を伸ばすことができ、世界樹に穿孔して潜り込んでは混沌の苗床に変わって世界樹を汚染していく厄介な存在。

 純粋な自然の精霊力と火に弱い。

ピスリ・カ・グ

 基本的には姿が見えない月の魔物であり、同系統の月の化け物烏賊いか、ゴ・ズドゥガの肉を食べると見えるようになるが、それ以外では水銀が淡い光を放つためにそれによって近くにいる事を識別するしかない。また水銀に非常に弱い。しかし何より恐ろしいのは、このピスリ・カ・グは他の生物を取り込み、特に脳を好んで取り込んではその生物とほぼ同じような姿の生き物を生み出し、繁殖させていくという性質だろう。つまり、人間を取り込めば人間を生み出してしまう事が可能で、古代のウロンダリアではそんな事が何度か起きたらしい。第三章では『深淵の探索者協会』の男女の探索者を体内に取り込み、雌雄体に分かれたらしいが、交接や繁殖をしたのかは今のところ不明。この化け物がいかなる理由でそんな性質を持っているのかも不明で、とても不気味な存在と言える。この画像は亜成体であり、成体は背の部分に大きな三日月形の触角が生える。

ヒカー

 闇の母神ハドナが数多く生み出す狼に似た魔物で、彼女の尖兵せんぺいのような役割を持つ。発達した鋭い爪や蹴爪けづめは世界樹を垂直に登る事が可能で、多くの場合は世界樹せかいじゅに暮らす種族及び世界樹そのものに危害を与える目的で生まれた邪悪な生物と言える。背中の刃のような骨針こっしんや蹴爪も生身ではひとたまりもない。知性は高くないが他の魔物やハドナの意思を感じ取る能力があり、組織的に行動するのと数の多さで決して侮れない魔物と言える。

ゴ・ズドゥガ

 赤い月シンの災いを追い続けたクリスカール・レルエスの書物『赤月禍せきげつか』においてもその存在が伝説とされていた恐ろしい化け物烏賊。大きな個体は教会の聖堂ほども大きく、全身が岩のように硬くて硫黄臭のある煙を上げ、牙のような棘だらけの触手で石造りの建物を滅茶苦茶に破壊する力があり、幾つかの漁村はこの化け物の攻撃で壊滅したらしい。しかし、触手の付け根、両目の間はやはり弱点らしく、第三章ではここに多くの鉛の矢や槍を射ち込まれて討伐された。この化け物烏賊の肉は美味しくはないが、食べると透明な月の魔物ピスリ・カ・グの姿が見えるようになるという効果がある

クヴァ・アタル

 闇の母神ハドナの生み出した魔物の中では、指揮官や将軍などに位置する高い知性と戦闘力を持つ魔物。闇夜であっても正確に飛翔しては世界樹の都のどこにでも攻撃可能な強靭な翼と、高い膂力を誇る四本の腕を持つ。英雄オーランドと絶剣『月光』がもたらされるまで、この魔物は三種族や古代には人間を大いに苦しめた。また、長い時の中で知性の高い者たちは次第に誇りのある性向を持ち始め、ハドナの勢力が最も強かった頃には何名かの魔王も存在していたと伝わる。

月の遺児たち

 この存在がどこまで闇の母神ハドナと関りがあるかは不明だが、月に送られた三種族の帰還できぬ魂の集合体であるこの巨大な魔物は、生まれ落ちる事もすでに腐敗した状態から始まっている。無数の頭蓋と生きながら腐るその姿は、取り返しのつかない哀しみを誘う。

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