かつて、『船の民』をめぐって界央の地の天使の軍勢八十億とダークスレイヤーが激突した『アスギミリアの戦い』において、ダークスレイヤーが永劫回帰獄より呼び出したとされる暗黒の破壊神。その正体は失われた闇の千世界そのものでは? という仮説がある。
その姿については、
──怒りに燃える赤い三つの眼を持ち、闇そのものの騎士のような巨体に怒りの赤い火の粉を纏わせていた。
とされるが、詳しい外見は伝わっていない。
エピソード『対マスティマ・ウンヴリエル戦』においては『蒼き翼の調停者』マスティマ・ウンヴリエルが呼び出した無数の隕石に対してダークスレイヤーがこの巨神を呼び出し、無数の暗黒の火線と『殲滅者の盾』の四つの砲口から放った白い光によってこれらを全て消し去っている。
一説によればこの巨神は『八罰の武具』と呼ばれる神々の罪を罰する八種の恐ろしい武器を持ち、さらに主武器として『炎と氷の剣』と呼ばれる大剣を持つとされているが、この組み合わせを恐れた界央の地は巨神を永劫回帰獄に、『炎と氷の剣』は氷獄に永遠に封じたとされている。しかし、『アスギミリアの戦い』においてはダークスレイヤーはこの二つの封印を解き、『炎と氷の剣』の一振りによって、八十億と謳われた天使たちはその三分の一に等しい数が消し飛ばされたと伝わっている。
この巨神の正式な名前は伝わっていないが、『船の民』たちは自分たちの神話になぞらえてこの巨神を『レイジス・スルト』と呼び、ダークスレイヤーもそれに倣っているようだ。しかし、その意味は作中では不明である。
失われた闇の千世界そのものとも伝わるこの巨神は、それゆえに消える事のない怒りを抱え、それ故に不壊であるとされ、また無限世界を形作る『隠れし神々』の言葉に近い概念で鍛えられた『炎と氷の剣』は、世界を形作る六層・六軸の概念全ての領域に極高温・極低温を同時に発生させることによって全てを灰燼に帰するとされ、それゆえに防ぎようがないと言い伝えられている。
また、現在のウロンダリアと他世界を結ぶ『巨神の裂け目』は、かつて闇の千世界(暗黒世界とも言う)の滅亡に際し、巨神が両腕から放った剣閃によって生じたとの真偽定かならぬ伝説もあり、非常に謎が多い存在でもある。
全ての謎が解ける日こそが、世界の終焉の日かもしれない。
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