NOVEL

『ダークスレイヤーの帰還』

第十話 バルドスタの夜会・後編

第十話 バルドスタの夜会・後編 ルインの言葉で静まり返った大広間は、しかし長くはその沈黙を保たず散発的な拍手によって破られた。賛同よりは皮肉な嘲(あざけ)りを感じさせるその拍手は、上部のバルコニー席から響いてくる。赤と黒の質の良い礼服を着た...
『ダークスレイヤーの帰還』

第九話 バルドスタの夜会・前編

第九話 バルドスタの夜会・前編 飛空戦艦『ヘルセスの剣』はバルドスタ戦教国せんきょうこくの首都オルリスを一周しつつ、迫る夕闇の中をゆっくりとその中心部に向かった。「あの、高い城壁に囲まれた向こうに見える、そびえる巨大な影がダスラの王宮です。...
『ダークスレイヤーの帰還』

第八話 バルドスタ戦教国へ

第八話 バルドスタ戦教国せんきょうこくへ さらに二日ほどのち。セレッサと共に傷ついたダギドラゴンの治療法について調べ物をしていたルインのもとに、チェルシーとベネリスが手紙を持って現れた。「ご主人様、バルドスタ戦教国の元老院げんろういんからで...
『ダークスレイヤーの帰還』

第七話 アーシェラ王女の涙

第七話 アーシェラ王女の涙 バルドスタ戦教国北方、モルオン・サダの隠れ里。 バルドスタの王族と、その許可を受けた特別な者しか通れない魔導まどうの転移門てんいもんを通じて、暗い瞳のベネリスは深山の空中に浮かぶ空の島に訪れていた。古く、だいぶ劣...
『ダークスレイヤーの帰還』

第六話 大魔城と大剣と

第六話 大魔城と大剣と 工人アーキタの都市国家ピステから『西の櫓やぐら』に戻ったルインとクロウディアは、さっそくチェルシーとラヴナに影人の工房を構えるにふさわしい城についての相談を始めたが、二人の答えは意外なものだった。「お城ですか? もら...
『ダークスレイヤーの帰還』

第五話 ガンスリンガー

第五話 ガンスリンガー 翌日。工人アーキタの都市国家ピステを再び訪れていたルインたちは、まずアゼリアの父ダルトンから、アゼリアが『西の櫓やぐら』に持ち込んでいた新型の銃のほとんどを譲り受けると、その後、工人たちの射撃場で専用の銃の受け取りと...
『ダークスレイヤーの帰還』

第四話 セルフィナの夢

第四話 セルフィナの夢 チェルシーと月見をしていたルインは、ウロンダリアの天体や星座について、興味深い話を聞いていた。「つまり、過去にはもう一つの月があり、それは過去の『眠り人』が封じたと?」「そうなんですよ。ただ、ウロンダリアは時間の流れ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三話 春の宵の下

第三話 春の宵よいの下 帰ってきた眠り女の顔合わせや、最近のピステでの事、ルインの状況の説明などを兼ねた宴会の席が、『西の櫓やぐら』でささやかに開かれていた。酒も出始めたあたりで席を立ったルインは、魔の都の喧騒や下の階の宴席での声を遠くに聞...
『ダークスレイヤーの帰還』

第二話 戻り来る眠り女たち

第二話 戻り来る眠り女たち 西の櫓やぐら、ルインの部屋。 暗い瞳のベネリスとの話は続く。「『殺し屋』という表現に、顔色を全く変えないのですね」 ルインの真向かいに座るベネリス。ふわりと、奥ゆかしい高貴な香りが部屋に漂う。「変に遠回しな表現を...
『ダークスレイヤーの帰還』

第一話 暗い瞳のベネリス

第一話 暗い瞳のベネリス ルインたちが工人アーキタの都市国家ピステに向かう機関車に乗って二日目の夕方、魔の都オブスグンドの『驚愕きょうがくの市場』の近くに大きな取引所を構える、『オード・ブラッド商会』の会員制のサロンには、高いワインと高級な...