NOVEL

『ダークスレイヤーの帰還』

第十一話 長靴をはいた猫

第十一話 長靴をはいた猫 ルインたちが深夜に魔王の城に向かってから三日ほどが経過していた。 魔の領域では『不帰かえらずの地』に向かう眠り人を補佐すべく、充実した後援としてギャレドの氏族とつながりのあるヤイヴの志願兵や、ヴァスモー兵のギュルス...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十話 夢魔たちの夜

第十話 夢魔たちの夜 リリスは三日月に腰かけたまま、少女のように楽し気に足をぱたぱたとさせている。「あの『人類の敵』がご主人様になびく可能性はまだわかるんですけど、ご主人様が気に入るかもしれないのはちょっとわかりません」 チェルシーは少し気...
『ダークスレイヤーの帰還』

第九話 魔王の苦悩、リリスの嘲り

第九話 魔王の苦悩、リリスの嘲あざけり 天を衝つく魔城の大門は音もなく静かに滑らかに開いた。扉に彫られた魔族や獣を象ったレリーフの眼の位置に魂が宿るように鬼火おにびが幾つか浮かび上がり、ルインたち三人を凝視するとすぐに消えた。続く階段とその...
『ダークスレイヤーの帰還』

第八話 深く、艶やかな夜

第八話 深く、艶やかな夜 ゴシュは長い話を語り終えて一息ついた。オーンの香木は武骨さの残る部屋を何か穏やかで心休まる場にしていたが、それでもこの場に漂う沈黙は重苦しいものだった。「ふー……。まあそんな感じであたいはここにたどり着いて、ザゲロ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第七話 ゴシュと骨付き肉・後編

第七話 ゴシュと骨付き肉・後編 姿の見えないゴシュを乗せた骨付き肉は、弾かれたように走り始めた。河原の石が飛び散り、その跳躍力に満ちた走りは、荒れ狂う疾風のようにジグザグだ。これは彼ら縞狼しまおおかみの特徴の一つであり、弓や投げ槍に対して有...
『ダークスレイヤーの帰還』

第六話 ゴシュと骨付き肉・中編

第六話 ゴシュと骨付き肉・中編 かがり火を増やしたゴシュたちの砦とりででは、台の上で胡坐あぐらをかき治療を受けていたギャレドが大声で指示を出し続けていた。祈祷師きとうしが失った左腕の付け根に緑色の粘性の高い霊薬れいやくを塗り続けており、脂汗...
『ダークスレイヤーの帰還』

第五話 ゴシュと骨付き肉・前編

第五話 ゴシュと骨付き肉・前編──ゴシュの語る回想。 ゴシュの頭を、古い革鎧の匂いのする手が少し乱暴に撫でていた。「よう娘っ子! 今日は縞狼しまおおかみを見つけてな。可哀想に母狼は人間に半矢はんや(※矢が刺さってもとどめに至らずとり逃してし...
『ダークスレイヤーの帰還』

第四話 不帰の地と、うごめく闇

第四話 不帰の地と、うごめく闇 一か月ほど前。 魔の国キルシェイドの南方、古代の地名ではヴァンセンと呼ばれていた地域。現在は『不帰かえらずの地』と呼ばれる地域の森の中を、四人の冒険者が探索していた。 彼らは大プロマキス帝国の由緒ある探索者た...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三話 ギゼとシトラ

第三話 ギゼとシトラ 夜もだいぶ更けた西の櫓やぐらのルインの部屋には、まだ煌々と光を放つ水晶と魔導の灯火の明かりが灯っている。「……よって、我が国セレウロは小国ではありますが……」 腕輪の姉妹の妹レティスの心揺らす美声が古王国の小国からの挨...
『ダークスレイヤーの帰還』

第二話 眠れぬ夜の密談

第二話 眠れぬ夜の密談 影人かげびとの皇女クロウディアは、しばしば見る悪夢の中にいた。「ダーサお父様、マヌお母様!」 影人の帝国、インス・オムブラの繊細かつ荘厳な宮殿、アンルーシェの広間を、クロウディアは両親の名を叫びつつ走っていた。──ク...