NOVEL

『ダークスレイヤーの帰還』

吸血鬼の都アンシルヴァル・前編

吸血鬼の都アンシルヴァル・前編──これは、眠り人ルインが目覚める少し前の話。 ウロンダリアは黒曜石こくようせきの都オブスグンド。その大城壁の西の櫓やぐら、眠り人の寝所。「チェルシーさん、眠り人様は今日もお目覚めには?」 暗い茜色あかねいろの...
NOVEL

氷の碧、炎の黒

氷の碧、炎の黒※『雪の白、血の紅』のエピソードの続きとなります。──私もまた、色の無い花でいい。 無限世界イスターナルの外周を囲む冷たい終焉しゅうえんの領域、氷獄クエリス。 再び長い年月が流れていた。かつてサリヤと呼ばれ、その後氷の女王と呼...
NOVEL

雪の白、血の紅

雪の白、血の紅──世界は愛に溢れているけれど、人の心には愛がない。私の心にも。──冷たいディレニスの碑文より。 無限世界イスターナルの辺境、冷たいディレニスという世界。 黄金の鎧よろいを着こんだ主神にして王、戦神せんしんコルベックは、快晴な...
『ダークスレイヤーの帰還』

落花流水、泥沼蓮華

落花流水らっかりゅうすい、泥沼蓮華でいしょうれんか 魔の国キルシェイドの黒曜石の都オブスグンド、ある夜の西の櫓やぐら。 金庫室で帳簿ちょうぼの管理をしていたチェルシー、アゼリア、シェアの三人は、今月の寄贈金きぞうきんの収益、支出のまとめを終...
『ダークスレイヤーの帰還』

詩人に手向ける夜の詩

詩人に手向ける夜の詩うた 広大なる魔の国は『黒曜石こくようせきの都』。その都を取り囲む大城壁の『西の櫓やぐら』 かつて『混沌カオス』の神々との決戦を見越して建造された乱世の都は、その傾斜した大城壁も町の建物も全てが魔力に満ちた黒曜石で出来て...
NOVEL

語る言葉は詩のように

【はじめに】 ウロンダリアの伝説の武人にしてシスラ共和国建国の父、武王ガイゼリックと『美しい人』セシレの出会いの物語のひとつです。 『武王ガイゼリックと美しい人セシレ』、『剣王ドランと賢妻ユリア』、ウロンダリアでしばしば語り継がれている、有...
『ダークスレイヤーの帰還』

北のアンスリノラと、物知りカルラ(第五章予告編)

北のアンスリノラと、物知りカルラ(第五章予告編) ウロンダリア北方、『氷の巨人の国』ハインランドに囲まれた、古い飛び地の城塞都市じょうさいとしアンスリノラ。 『天空に届く氷』と謡うたわれる氷に閉ざされた高い山脈の中にあって、このアンスリノラ...
NOVEL

第二幕 ある戦いの果て

第二幕 ある戦いの果て──全ての世界の果てにして終焉しゅうえんとされていた、凍てついた領域、氷獄クエリス。 氷でできた月の照らす空を、凍てつく空気の粉をきらきらとまとわせて、尾の長い優美な雪鳥ゆきどり(※1)が人を乗せてゆっくりと旋回してい...
NOVEL

第一幕 虚無の海辺の夢

第一幕 虚無の海辺の夢 虚無の唄うたのように、さざ波の音が世界を満たしている。 暗い海に沈みかけている夕日は、もうだいぶ前からその動きを止めている。今はまだ波が動いているが、それももうじき止まるだろう。少し前までアーラスと呼ばれていた、この...
NOVEL

第二章エピローグ  王女は空に手を伸ばす

第二章エピローグ  王女は空に手を伸ばす ウラヴ王の死と、魔王ザンディールの撃破から数日が過ぎた。バルドスタのダスラの王宮は今、しばらく雌伏しふくしていた王族派の者たちが続々と戻ってきており、忙しかったその評価と役職の割り当てもだいぶ落ち着...