第三章

『ダークスレイヤーの帰還』

第三十七話 闇に堕ちる

第三十七話 闇に堕ちる  いずこかの世界ウル・インテス、『二つの世界樹の都』テア・ユグラ・リーア。  頭上の月から降りてくる黒い船のような形をした何かは、近づくにつれて相当な大きさだと皆が理解し始めた。 「あれは、まさか本当にミゼステ様が?...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三十六話 真実は月の下に

第三十六話 真実は月の下に  『二つの世界樹の都』テア・ユグラ・リーア。  従者である黒い有翼の獅子シベレーに乗ったラヴナは、世界樹の枝を素早く駆け上がって最上層の魔法陣を目指していた。 (おかしい。精霊力せいれいりょくがどんどん減衰してい...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三十五話 月の魔女、月の遺児

第三十五話 月の魔女、月の遺児  世界樹の上層の枝。 「撃ち方やめ! 何かおかしいぞ!」  古き民アールンの射手を率いていた男が全員に呼び掛けた。セレッサもそれに倣い、攻城弓から手を離す。 「あれは何だ? いつもと違うぞ!」  赤い月は『二...
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第三十四話 赤い月は哭く

第三十四話 赤い月は哭なく  『二つの世界樹の都』テア・ユグラ・リーア、深夜。  セレッサは世界樹のかなり上層の枝まで、他の古き民たちと共に蛇のように生ける蔦つたを使って登り、多くの射手たちの一人として配置についていた。『白銀はくぎんの攻城...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三十三話 隠された何か

第三十三話 隠された何か  『二つの世界樹の都』テア・ユグラ・リーア、最上層の聖堂都市。  ウロンダリアから呼ばれた戦士たちは、それぞれの転移先での戦いを終え、世界樹の分霊ぶんれいの導きにより、この聖堂都市の広場に設けられた休憩所に集合して...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三十二話 月の花と黒い花

第三十二話 月の花と黒い花  『古都ことの門もん』の洞窟内広場。  シェアとカレンは円を描くように対峙しつつ、しばしば数合切り結んでは離れるという膠着こうちゃくした状態にあった。  シェアの目は静かで、対する表情のないカレンのほうがどこかに...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三十一話 混沌との接触

第三十一話 混沌カオスとの接触  次元のはざまの暗黒の空間を飛ぶように移動していたルインは、やがてその移動の終わりに気づいた。張り詰めていた鎖がいつの間にか、異変のおきた釣り糸のように緩んでいる。 「バゼリナ!」  ルインは遠い遠い昔、何か...
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第三十話 薔薇の眠り人と悔悟の天使

第三十話 薔薇ばらの眠り人と悔悟かいごの天使  『二つの世界樹の都』テア・ユグラ・リーア、大高壁正門の上。  『薔薇ばらの眠り人』ロザリエ・リキアとの再会で驚いていたラヴナは、あまり気後れを見せたくない相手に対してすぐに思考を巡らせた。かつ...
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第二十九話 テア・ユグラ・リーアの戦い

第二十九話 テア・ユグラ・リーアの戦い  バゼルとルイン、そしてシェアを欠いた状態の探索者集団は、暗黒に若草色の印章いんしょぅがえんえんと連続した、おそらく高度な魔法の術式により構築された地平に立っていた。  双子の世界樹せかいじゅの精霊の...
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第二十八話 古都の門

第二十八話 古都の門  翌朝。不帰かえらずの地の奥地、ヴァンセン湖を見下ろす丘の野営場所。  十分な休息を取った大規模な探索者集団は、ヴァンセンと呼ばれる湖を見下ろす丘から緩やかに湖畔を下って行った。やがて湖は堤のような巨大な岩壁にせき止め...