第三章

『ダークスレイヤーの帰還』

第十七話 鋏の女王

第十七話 鋏はさみの女王  南方新王国、モーダス共和国領、水銀鉱山都市ゼイド、異端審問官たちの隠し砦。 「っ!」  蜂蜜と豆醤とうしょうにつけた大盛りの焼肉とワインを楽しんでいたバゼルは、召喚された従者がほとんど血と絶望を集めずに撃破された...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十五話 接触と崩壊

第十五話 接触と崩壊  さいはての村ウーブロ近くの高台にある転移門から出てきたルインたちの元に、ふもとから急ぎ上って来る数名の男たちがいた。男たちは皆『カイナザルの仮面』を被っている。 「ルイン様、異端審問官たちです」  退魔教会たいまきょ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十六話 鋏の従士

第十六話 鋏はさみの従士じゅうし  クローバスが投げた巻物から現れた『鋏はさみの従士じゅうし』たちは、ぬかるみの影響を全く受けず、建物や木、時に人をも透過して、円形闘技場の戦車のように村の中を旋回し始めた。その轍わだちの跡だけは油の様に黒く...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十四話 さいはての村へ

第十四話 さいはての村へ  南方新王国、モーダス共和国領、水銀鉱山都市ゼイド。異端審問官たちの隠し砦。 「キルシェイドの城下町、ローグンドの密偵より連絡だ。キルシェイドの眠り人たちは明日、『不帰かえらずの地』に向かうらしい!」  羊飛紙(よ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十三話 カイナザルの仮面

第十三話 カイナザルの仮面  南方新王国。  鋭く尖った杭頭くいとうの丸太で囲われた、要塞のように物々しい鉱山の入り口を始点として、山の坂道はふもとの町まで延々と丸太組みの檻車おりぐるまが続いている。小さくないうめき声がいつまでも続くその檻...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十二話 ラヴナのわずらい

第十二話 ラヴナのわずらい  西の櫓やぐら、ラヴナの部屋。  チェルシーはラヴナを励ましつつ幾つかの対応策をあれこれと頭の中で比較し、それぞれの対応策の『未来』まで考えて、ある一つの解を出した。 「……結局は単純な方法が一番いいかな。何とか...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十一話 長靴をはいた猫

第十一話 長靴をはいた猫  ルインたちが深夜に魔王の城に向かってから三日ほどが経過していた。  魔の領域では『不帰かえらずの地』に向かう眠り人を補佐すべく、充実した後援としてギャレドの氏族とつながりのあるヤイヴの志願兵や、ヴァスモー兵のギュ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第十話 夢魔たちの夜

第十話 夢魔たちの夜  リリスは三日月に腰かけたまま、少女のように楽し気に足をぱたぱたとさせている。 「あの『人類の敵』がご主人様になびく可能性はまだわかるんですけど、ご主人様が気に入るかもしれないのはちょっとわかりません」  チェルシーは...
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第九話 魔王の苦悩、リリスの嘲り

第九話 魔王の苦悩、リリスの嘲あざけり  天を衝つく魔城の大門は音もなく静かに滑らかに開いた。扉に彫られた魔族や獣を象ったレリーフの眼の位置に魂が宿るように鬼火おにびが幾つか浮かび上がり、ルインたち三人を凝視するとすぐに消えた。続く階段とそ...
『ダークスレイヤーの帰還』

第八話 深く、艶やかな夜

第八話 深く、艶やかな夜  ゴシュは長い話を語り終えて一息ついた。オーンの香木は武骨さの残る部屋を何か穏やかで心休まる場にしていたが、それでもこの場に漂う沈黙は重苦しいものだった。 「ふー……。まあそんな感じであたいはここにたどり着いて、ザ...